激増するオバさん社員に、会社の中での居場所はあるか?
ところが日経DUALの記事は、先述したとおりルックスの整った“キラキラ女子社員”を始め、ある意味最もとがった女性観を持っているように世間では思われているであろうサイバーエージェントから、「今後、日本社会に激増するおばさん社員の望ましいあり方」を引き出している。なんという慧眼(けいがん)か。
記事では、「サイバーエージェントでは、“キラキラ女子”が年齢を重ね、結婚・出産をした“コブ付きおばさん社員”となっても、会社に居場所はあるのでしょうか!?」との羽生編集長の問いに、藤田社長が「もちろん、キラキラ女子じゃなくなっても働き続けてもらえますよ(笑)」と爽やかに答える。
記憶を何十年さかのぼっても一向にキラキラ女子だった瞬間が思いあたらない私は、「あのキラキラサイバーでも、非キラおばさんに居場所がある」ということがにわかには信じられない。記事を読み進める。藤田社長の発言を引いてみよう(以下、太字)。
「“顔採用”なんてことはありませんが、サイバーっぽいかどうかを基準に採用すると、男女ともに性格が良かったり、見栄えもぱりっとしていたり(略)似たような雰囲気や外見と素直さで、結局なんだかんだ同じような子になる」
ふむふむ、サイバーエージェントでは“素直=潜在能力が高い”と捉え、素直な子を採ったら、結果的に外見の整った子がそろっちゃったんですね、分かります(屈折)。
「女性は働く際にロールモデルを気にするので、家庭持ちで仕事もプライベートも充実している人が出世するという空気は流すように気をつけている」
なるほど。では、藤田社長が女性社員をケアするときに心がけているのは何か。
「上の立場にいる女性が怖くならないように、チェックしている」
……怖い、とは?
「仕事ができる女性、特にプライベートをかなぐり捨てて仕事をしてきた人は“どんどん怖くなっていく”傾向がある」
「上の人がキラキラしているというか、憧れる対象にならないと、下に続く社員は出世意欲を失っていく。だから女性管理職に対して『怖くなるなよ』とたまにメッセージを発するようにしている」
ぐはぁっ。グッサーーーーと、どこからか極太の槍が勢いよく飛んできて心臓に刺さった。怖い、かぁ……。私の人生、結構若い時から言われ慣れた言葉だなぁ……。怖い、キツい、捕って食われそう……暗黒の記憶がよみがえって、もう椅子の上で息絶えそうだ。
キラキラ女子でなくなっても会社にいていいよ、でも仕事に邁進し過ぎて“怖いオバさん”になっちゃだめだよ――道理で、記事の発言には最初から最後まで“優秀”、“有能”、“デキる”、“リーダーシップ”のような、男社会で伍して頑張る女性を評するときの頻出語が出てこなかったわけである。それらは、怖いからだ。“サイバーっぽく”ないからだ。