表情を豊かにするトレーニングで顔の筋肉をほぐす

喜怒哀楽の感情が動いたときに、それにあった表情が自然に出るにはどうしたらよいでしょうか。

私が「クシャおじさん」「ムンクの叫び」と呼んでいる、表情を豊かにするトレーニングがあります。まず、10秒数えながら顔の中心にすべてを思いっきり寄せます。目をギュッとつぶって口も突き出して寄せます。そして、次に10秒数えながら全部を開きます。顔を徐々に縦に開いていくイメージです。全部を集め、全部を伸ばす。両方の極端な表情をすることで顔の筋肉をほぐします。

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表情を豊かにする筋肉トレーニング(イラスト=米山夏子)

これまで多くの方を指導してきましたが、表情をつくろうとしても、肩こりのように顔の筋肉がこっている人が多い。「うれしい顔をしてください」と言っても、まるで変わらない人もいます。顔の筋肉を使わないから衰えてこり固まっている。こった肩をもみほぐすように、顔の筋肉もほぐさなければなりません。

一般的には、笑顔は好印象です。朝、この表情筋トレーニングをし、最高の笑顔をつくったままメイクすることをお勧めします。笑った表情のしわができた状態でベースを塗れば、メイクもよれにくくなります。ぜひ明日から試してみてください。

大事な交渉事の前に、多くの方は話す練習をしますよね。そのときは、必ず鏡の前で練習しましょう。なぜならどんな表情で話しているかを知ることが大事だからです。鏡の前でやらないと効果は半減します。たとえて言えば、パワーポイントでつくった資料のプレビューを確認せず、本番でいきなり出すのと同じことです。「こんなフォントのはずではなかった」「見づらかった」「何でここで文字がずれてるの」なんていう失敗はしたくないですよね。人前で話したり提案したり、交渉事の前には鏡の中の自分に向かって、どんな表情でそれを言っているのか、よくチェックしてください。

明るい未来を語るときに大スマイルを使えるのは女性ならでは。ミラーリングといって、自分が笑顔なら相手もつられて笑顔になります。すると、楽しい気分になってくる。「この提案を受け入れてみようかな」という相乗効果も期待できます。提案やお願いをするときは、眉間にしわを寄せたり深刻な顔になるのではなく、大スマイルで。大きな笑顔は女性の必殺の武器だと思ってぜひ鍛えてください。

矢野 香
信頼を勝ち取る「正統派スピーチ」指導の第一人者。NHKキャスター歴17年。大学院で心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究し、修士号取得。現在、国立大学の教員として研究を続けながら、政治家、経営者、上級管理職などに「信頼を勝ち取るスキル」を伝授。全国から研修・講演依頼があとをたたない。著書に、ベストセラー『その話し方では軽すぎます! エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』(すばる舎)など。http://www.authenty.co.jp/

構成=坂口さゆり イラスト=米山夏子