資金調達は経営者にとって究極の経営課題。しかし、女性は金融機関との取引実績が少なく「資金調達が難しい」と言われている。資金を得るには、どうしたらいいのか? 女性起業サポートセンター創設者・栗原美津枝さんに話を聞いた。
▼女性の起業3条件の1つ目「経営者の資質」、2つ目「アイデアの具体化」はこちら→http://woman.president.jp/category/pw00070
3.資金調達
●そもそも「起業」って、自己資金がたっぷりないと無理ですよね?
DATA.1「起業していない理由」トップに「自己資金不足」、【1.経営者の資質】で紹介したDATA.3「起業前の課題」の3番目に「開業資金の調達」が挙がっている。しかし、下記DATA.2にあるように約6割の女性起業家が100万円未満で開業しており、DATA.3には、金融機関から借り入れをしたのはたった8.3%とある。
「『女性は資金調達が難しい』といわれますが、性別の問題ではなく、そもそも事業計画に問題があるのでは。もしくは資金調達が苦手だからといって協力者に任せたり、従業員が説明して自分はほとんどしゃべらないなど、経営者資質を問われたのかも。女性は金融機関との取引実績が少なく、保証人や自己所有の担保の用意ができない方が多いので融資を受けにくいことは否定しきれません。
しかし、起業融資は成長資金の提供。金融機関が起業家とともにリスクを背負おうと思える事業計画を示すことができれば、融資を行ってくれるはず。資金調達は経営者にとって究極の経営課題。金融機関に断られた理由に耳を傾け、事業計画を見直したり、事業リスクに備えることも重要。最近は、共感してくれる小口投資家から資金調達する方法(クラウドファンディング)もあります。貪欲にチャンスを探してほしいですね。
過去3回行われた日本政策投資銀行の“女性新ビジネスプランコンペティション”のファイナリストの方々でも、『やりたいことがたくさんあり、資金が足りない』という方はいます。でも、資金不足が事業拡大できない根本的な原因になっているとは思えません。ファイナリストの方々が私たちに望むことは、資金提供より専門的なノウハウの提供やビジネスマッチングなどのサポートですからね」
資金調達で悩んでいるなら事業計画の練り直しから始めたほうがよさそう。開業時の費用を低く設定することに躍起になるより、綿密な収支計画を立てて資金調達を検討することのほうが、起業成功への近道といえそう。
●日本政策金融公庫(創業融資)
政府系金融機関。民間金融機関から融資を受けにくい中小企業や個人が受けやすい。低利かつ長期で融資が受けられ、返済据え置き期間や女性向けの利率の低い制度も。
●補助金・助成金
補助金や助成金を用意している民間・公的機関は多い。返済の必要のない資金なのでメリット大。しかし、確実に調達できるとは限らないので、短期の資金繰りには向かない。
●個人投資家(エンジェル投資家)
将来性のある事業に共感する個人が起業家に自己資金を投資すること。投資の見返りとして起業家は株式などを提供するのが一般的。個人投資家のマッチングサイトも。
●各地方自治体(制度融資)
各自治体が行う事業資金融資の斡旋(あっせん)システム。民間金融機関が窓口となり、自治体からの預託金を元に低利で融資が行われる。融資を受ける条件は自治体で異なる。
●民間金融機関
独立前後の起業家が民間金融機関から融資を受けるのはハードルが高いが、事業計画に絶対の自信があれば挑戦したい。狙い目は大手より地域密着型の信用金庫や信用組合。
●クラウドファンディング
インターネットで支援者を募り、不特定多数から資金支援を受けるシステム。社会性の高い案件は支援者を集めやすい。リターン無しの寄付型やリターン有りの投資型も。
●各商工会議所
銀行の融資などと違い、無担保・無保証人でも受けられるという特徴があるが、融資額自体はさほど大きくない。自治体や公庫、民間金融機関の融資斡旋の仲介も。
●ベンチャーキャピタル
成長が見込めるベンチャー事業に対しハイリターンを狙った投資を行う投資会社のこと。事業に資金を投資するとともに、取締役会に参加するなど事業運営に関わることも。
●家族・親族・友人
資金調達先として真っ先に思い浮かぶ相手。無利子・無担保・返済期限なしなど条件は相手との関係次第。しかし、好条件に甘えず、早期返済、マメな事業報告は行いたい。
日本政策投資銀行 常勤監査役。一橋大学卒業。M&Aや財務、ヘルスケアファイナンス等を経て、同行初の女性役員に。赴任先のスタンフォード大学でベンチャーファイナンスを研究。女性起業サポートセンター創設者。