厚生労働省の調査によると、相談相手がいる父子世帯は56.3%で、相談相手がいる母子世帯の80.4%よりも約24ポイント少ないのが現状だ(グラフ参照)。父子家庭の父親が悩みを相談できる人や場所を作ってあげることが必要になる。
しかし、そこにも壁が立ちはだかる。それが第二のハードル、地域とのコミュニティー作りだ。妻がいるときは長時間労働だった父親が多いため、居住する地域との接点がなく、頼る相手がいない人も多い。特に都会では地域コミュニティー自体が機能していないこともある。さらに、保育所や小学校などのPTAや保護者会などは、大半が母親で構成されており、なかなか入っていきにくい。こうした環境が、父子家庭と地域のコミュニティーとの隔絶を生じさせる。
周りの人々には何ができるだろうか。父子家庭の父親だけに呼びかけようとしてもなかなか見つからないので、まずは、父親同士のコミュニティーを作ることが重要だ。そのなかで、父子家庭の父親がいることがわかったら、周囲がしっかりとケアするという流れが大事だ。また、保護者会などの開催時間も、平日夜や土日に開催するなど、父親全体が入りやすい環境を作ってみるのもいい。
隔絶された世帯は見つけにくい。行政が子育て支援者や民生委員(児童委員)などと情報共有し、連携しながら、まずはさまざまな支援があることを知ってもらい、周囲との壁を取り外していく必要がある。周囲がそうした父子の存在に気づき、いかに地域に巻き込んでいくかも今後求められることではないだろうか。
労働・子育てジャーナリスト。2012年7月~14年6月にはファザーリング・ジャパン代表理事を務めた。元内閣府子ども・子育て会議委員。
文=吉田大樹 イラスト=Yooco Tanimoto