男性のひとり親も、両立に苦心しています。

日々の暮らしの中で、父子家庭はどうやってその難局を乗り越えていけばいいのか。ここ数年、支援団体の尽力やマスコミの影響で、父子家庭を取り巻く社会的な関心が以前よりも高まってきた。母子家庭だけに支給されていた児童扶養手当や遺族基礎年金が父子家庭にも支給されるようになったりと、国の施策が「母子」「父子」という枠組みから「ひとり親」という枠組みに移行してきたことは大きな前進だ。

イラスト=Yooco Tanimoto

もともと、児童扶養手当が父子家庭に支給されていなかったのは、「父子家庭のほうが母子家庭よりも平均年収が高い」という国の見解があったからだ。しかし、国税庁の民間給与実態統計調査結果をみると、30~34歳男性の平均給与は1997年の513.2万円をピークに減少し続け、2013年には437.6万円まで下がっている。このような状況下で、低所得の父子家庭を保護する必要があったことは言うまでもない。

筆者自身も父子家庭になってから5年になる。当初子どもたちが小1、年少、2歳という年齢で、保育所のお迎えで残業が一切できず、収入を大きく減らし、貯蓄のショートが不安だった。

とはいえ、妻がいたときから家事や子育てに関わり、スキルの面で悩まなかったぶん、父子家庭としては恵まれていたかもしれない。一般的には、家事や子育てのスキルは、父子家庭にとっての第一のハードルであり、わが家が難局を乗り越えられた大きな要因であったと考えている。

普段、家事や子育てにまったく関わらない状態で父子家庭という状況に突入してしまえば、そこで大きくつまずく。こうした危機を乗り越えるためには、父子家庭になった父親に対して、父子で参加できるイベントなどを開催し、少しでも家事・育児スキルを獲得するための行政の支援がほしいところだ。

ただし、家事や子育てがうまくいったとしても、毎日がイレギュラーの連続。思い通りにならないことへのイライラは、時として子どもに手をあげたり、大声で怒鳴り散らしたりという行動につながる。密室状態に置かれている専業主婦世帯の母子や母子家庭でも同じような悩みを抱えているはずだ。

厚生労働省の調査によると、相談相手がいる父子世帯は56.3%で、相談相手がいる母子世帯の80.4%よりも約24ポイント少ないのが現状だ(グラフ参照)。父子家庭の父親が悩みを相談できる人や場所を作ってあげることが必要になる。

父子世帯の相談相手の有無

しかし、そこにも壁が立ちはだかる。それが第二のハードル、地域とのコミュニティー作りだ。妻がいるときは長時間労働だった父親が多いため、居住する地域との接点がなく、頼る相手がいない人も多い。特に都会では地域コミュニティー自体が機能していないこともある。さらに、保育所や小学校などのPTAや保護者会などは、大半が母親で構成されており、なかなか入っていきにくい。こうした環境が、父子家庭と地域のコミュニティーとの隔絶を生じさせる。

周りの人々には何ができるだろうか。父子家庭の父親だけに呼びかけようとしてもなかなか見つからないので、まずは、父親同士のコミュニティーを作ることが重要だ。そのなかで、父子家庭の父親がいることがわかったら、周囲がしっかりとケアするという流れが大事だ。また、保護者会などの開催時間も、平日夜や土日に開催するなど、父親全体が入りやすい環境を作ってみるのもいい。

隔絶された世帯は見つけにくい。行政が子育て支援者や民生委員(児童委員)などと情報共有し、連携しながら、まずはさまざまな支援があることを知ってもらい、周囲との壁を取り外していく必要がある。周囲がそうした父子の存在に気づき、いかに地域に巻き込んでいくかも今後求められることではないだろうか。

吉田大樹
労働・子育てジャーナリスト。2012年7月~14年6月にはファザーリング・ジャパン代表理事を務めた。元内閣府子ども・子育て会議委員。