ビーントゥーバーで個性豊かなカカオ豆を食べ比べ

では、次にビーントゥーバーの世界をのぞいてみましょう。コーヒーのように、産地や農園などで異なるカカオ豆の味わいを楽しむビーントゥーバーは、欧米で生まれた新しいチョコレートの流れ。日本でもここ2、3年で認知度は高まり、「ショコル」(世田谷区深沢)、「クラフト チョコレート ワークス」(世田谷区池尻)「バニラビーンズ」(横浜みなとみらい)などビーントゥーバーの専門ショップが誕生しています。

【写真左】Minimal Flight 2016/24枚入り5940円。中南米、アフリカ、アジアにある8カ国のカカオ豆を8種類のチョコレートにしたバレンタイン向けのセット。スミレの花のような風味のニカラグア産、ピーナッツに似た香ばしさのタンザニア産、シナモンやドライフルーツの風味を感じるガーナ産、フルーツヨーグルトのような酸味と甘みが絶妙なマダガスカル産、スパイシーなインドネシア産など、産地ごとのカカオ豆の繊細な特徴が味わえる。限定2650セット。取り置きは不可。【写真左】看板商品の板チョコレートは、味わいの特徴からNUTTY、FRUITY、SAVORYの3つのラインを製造。使われるカカオ豆は季節で変わり、原産国、品種、収穫時期、製法などを細かく記載したレシピカードをコレクションする楽しみも。1枚972円~(価格は全て税込み)。

その火付け役というべき店が、渋谷区富ヶ谷にある「Minimal(ミニマル)」です。仕入れているのは15カ国、25種類のカカオ豆。このうち5~8種類(時期により異なる)がタブレットになって店頭に並びます。どれも砂糖以外に何も加えず、シングルオリジンでチョコレートにするのが特徴です。

「工程は選別・焙煎・摩砕・調合・成形に分けられますが、焙煎を強くしたり、荒く挽いたりとカカオ豆ごとにすべて変えて、個々の持ち味を引き出すようにしています」と代表の山下貴嗣さんは言います。

そのチョコレートはカカオの粒を残しているため、カリカリと小気味いい歯応え。とはいえ、味はナッツのように香ばしいもの、柑橘に似たさわやかな酸味があるもの、スパイスの香りを持つものなど、「カカオによってこんなに違うのか」と驚くほどです。

こうした味の違いを食べ比べできるのが、「Minimal Flight2016」と名付けられたバレンタイン用のセット。産地の異なる8種類のカカオ豆からつくった小型のタブレットが、カラフルなケースに詰められています。

そのまま味わうだけでなく、飲み物とマリアージュさせるのが山下さんのお薦め。「ナッティなハイチ産はコーヒーやミルクティーと、フルーティーなベトナム産はワインに、スパイスやココナッツのニュアンスを感じるガーナ産は、意外にも熟成感のある日本酒と相性がいいですよ」

産地に思いを馳せながらゆったり味わえば、気分はぐるり一周世界旅行。日頃、忙しく働くあなたも、とっておきのチョコレートでカカオの旅に出かけてみませんか。

■Minimal
東京都渋谷区富ヶ谷2-1-9
電話/03-6322-9998
営業時間/11:30~19:00 月曜定休(祝日の場合は翌日)
タブレットのビーントゥーバーチョコレートはその時々で種類を違えて5~8タイプ(時期により異なる)を販売。カカオニブやドリンク用のパウダーチョコレート、チョコレートドリンクなどもある。詳しくはホームページで。
上島寿子
ライター。1年半のOL生活を抜け出し週刊誌の記者となった後、フリーに。食や住まいなど生活に関わる分野で執筆。dancyu誌での執筆は1993年から。仕事と両立してきた子育ては卒業間近。