夫の「年金」は期待ほどもらえない

さらに離婚後の生活で気がかりなのは、将来の年金はどうなるかということ。2007年から始まった「合意分割制度」によって、夫婦の合意のもとで「年金分割」が可能になった。これは結婚していた期間の年金保険料は夫婦が共同で支払ったものとして受け取る権利を分割するという考え方に基づき、共働きの場合はお互いの厚生年金の報酬比例部分を合計して、その分け方を決める。妻のほうが収入が多ければ、妻から夫へ年金を分割することもありえるのだ。

イラスト=あずみ虫

また08年からスタートしたのが「3号分割制度」。会社員や公務員家庭の専業主婦を対象に、婚姻期間中の夫の厚生年金については、夫婦間の合意なしでも離婚後2年以内に請求すれば2分の1ずつ分割できるようになった。その金額などは年金機構に問い合わせると離婚前でも教えてもらえるというから、離婚を現実的に考えている人は一度尋ねてみるといいだろう。ただし、年金をあてに熟年離婚を考えるほど、年金分割でもらえる額に期待を寄せるのは間違い。いざ算出された額を見て愕がく然ぜんとする妻も多いとキモに銘じたい。

不貞・DV離婚なら慰謝料を請求

実際に安田さんが受ける相談では、どのような離婚理由が多いのだろうか。

「性格の不一致やセックスレスなど夫婦関係の問題はさまざまありますが、子どもがいても離婚を考えるケースは圧倒的に不倫が多いですね。夫の暴力や家庭内でのドメスティックバイオレンス(DV)も深刻ですが、夫からのモラルハラスメントで精神的苦痛を抱える妻たちも増えています」

離婚にまつわるお金では「慰謝料」を請求できるケースがある。財産分与とは別に、離婚の原因をつくった「有責配偶者」に対し請求することができ、浮気や不倫といった不貞行為、モラハラやDVなども慰謝料の理由になる。また、離婚原因が不貞の場合、浮気相手にも慰謝料を請求できるが、相手と直接やり取りしたり弁護士を立てるなど、精神的にも金銭的にも負担がかかる。訴訟を起こすと、さらに費用がかかると心得ておきたい。

夫婦間に子どもがいる場合は「養育費」も発生する。一般に親権を取って扶養する側に、もう一方が支払うケースが多い。金額は裁判所が作成した「養育費算定表」を参考に算出され、子どもが成人するまでと決めることが多いがケースバイケース。調停では親の経済状況が加味されることも多い。

「とはいえ母子家庭の調査では、たいてい4年ほどで夫からの支払いが滞っているのが現状です。夫婦で話し合って協議離婚する場合、口約束ではなく書面に証拠を残すことが必要です。継続的に養育費を受け取るためにも、公正証書の作成をオススメしますね」

財産分与を請求できるのは離婚したときから2年以内とされるが、離婚後は精神的ダメージも重なり、互いに連絡も取りにくくなる。離婚する時点で、養育費も含めて、預貯金や住宅など財産の分け方などの取り決めを公的文書にしておくことが大事と、安田さんはアドバイスする。

安田まゆみ
マネーセラピスト。「元気が出るお金の相談所」代表。東京生まれ。著書に『月5万円ムリなく貯まるシンプルな生き方』(中経の文庫)など。今買いたいものは、「ONE OK ROCK」のライブDVD。

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