経済リスクは自分で手当てできる
がんの影響は収入面にも波及します。ある調査では、退職や収入減を経験した人は3割にも及び(グラフ参照)、経済的な理由が治療に影響した人は6%でした。経済的な悩みは、より良い治療法の選択を諦めさせ、ひいては心身の健康をさらに損ないかねません。
黒田さんは「病気は100%予防できません。治療や職場、収入の問題も自分一人ではコントロールできない。でも、経済的なリスクに備えることはできるのです」と強調します。
がんの経済的リスクの備えに欠かせないのは公的保障にプラス、私的保障(自助努力)の預貯金と民間保険です。
「公的保障として高額療養費制度(※)があるから民間保険は要らないという方もいますね。でも女性の30代、40代は貯金もこれから。個々の事情に応じて、民間保険を一つのセーフティーネットとして考慮するべきだと思います」
※高額療養費制度/医療機関や薬局での支払い額が一定額を超えた場合に、超えた金額が支給される制度です。
その際に注意してほしいのは、今のがん医療は「入院は短期間、通院は長期間」が大原則で「進行がんほど医療費がうなぎ上りに高額になる」こと。
「乳がんなど、術後に5年、10年とホルモン治療を続け、定期検診に通わなければならないケースや、患者さんによっては、高額な分子標的治療薬を長期間使用するケースもあります。高額療養費の多数回該当(※)でも、自己負担額は医療費だけで月額4万4400円~(収入および年齢で変動)です」
※多数回該当/直近の1年間に3回以上、高額療養費が支給されている場合、4回目以降からさらに自己負担額が減額されます。
初年度の医療費に加え、治療が長くなることを考えると、手厚い通院保障は必須でしょう。