世帯年収中央値は15年で「+300万円」

これを、男女平等意識や共働き意識の高まりなどと価値観軸で処理するのはあまりに呑気すぎます。この背景には、もはや夫の一馬力ではとても家族を運営できなくなったという経済環境の構造変化があるからです。

同じく出生動向基本調査では、25~34歳を対象として、独身男女、夫と妻、世帯のそれぞれの年収分布も公開されています。その分布からそれぞれの年収中央値を計算して2010年からの推移で比べたものが以下のグラフです(図表1)。

【図表】各属性別年収中央値推移 2010~2025年

まず、夫と妻の年収についてみてみます。双方増加で、この15年間で夫は年収中央値が151万円増加、妻はそれを上回る234万円の増加です。これは2010年段階では妻の年収中央値が0円、つまり専業主婦が半数を占めていたためです。

世帯年収中央値も妻の年収増とともに増加し、2010年には506万円だった世帯年収中央値が、329万円増の835万円にも達しています。

これは、夫婦共働きが増えたということと連動しますが、決して夫婦共働き意識があがったからという悠長な話ではありません。夫の給料の増加分だけではとても足りないので、妻が働かざるを得なくなったと見るのが妥当でしょう。つまり、男性が結婚相手の女性の経済力を求めるようになったのは、もはや夫だけでは結婚および家族生活が成り立たないという経済環境の変化によるものです。

普通の独身男女が結婚できないワケ

そして厳しいのは、独身男女です。2010年から年収中央値増加分は、女性80万円増、男性に至ってはたった64万円増です。増加率にして女性35%増、男性23%増でしかありません。その間の消費者物価指数(帰属家賃のぞく)は22%増なので、独身男性にしてみれば、ほぼ実質年収は変わっていないことになります。加えて、この間にも社会保険料などの増額があり、実質手取りはむしろ減っています。

しかし、前述した通り、女性が求める年収条件だけはどんどんインフレしており、そんな中で、特に若い独身男性が「もう金がなくて結婚なんて無理」と嘆くのは構造上当然と言えます。

もうひとつ残酷な現実として、独身男女のそれぞれの中央値を足しても650万円にしかならず、現在結婚している夫婦の世帯年収中央値835万円には遠く届かない。要するに、中央値の年収同士の男女ではとても結婚できなくなっていることです。