女性の負担は減っているのか
スペインの男性育児休業について分析を行ったのはポンペウ・ファブラ大学のリベルタード・ゴンサレス准教授らです(*1)。
先ほども述べたとおり、スペインでは2017年から2021年にかけて、父親の育児休業制度が段階的に拡充され、多くの男性が約4カ月間の育児休業を取得するようになっています。
たった4カ月の育休でも実際に育児に向き合うことで、その後の働き方、育児・家事へのかかわり方への積極性が増すと考えられます。その結果として、女性の負担が軽くなり、男女の働き方の格差が縮小するはずです。
このため、育休制度が拡充された後に子どもを持った世代では、出産後の男女の所得格差が小さくなっている可能性があります。
ところが、結果は違いました。
「チャイルドペナルティ」は変化なし
父親の育休期間を大幅に延長しても、出産後の男女の所得格差には明確な改善が見られなかったのです。
2017年から2021年までの5回の制度拡充について調べても、制度拡充前後で、出産後の父親と母親の所得の推移に目立った違いはありませんでした。
つまり、父親が取得できる育休を4週間から16週間へと大幅に増やしたにもかかわらず、出産によって生じる男女の労働市場上の格差、いわゆる「チャイルドペナルティ」は小さくなっていなかったのです。
それはなぜなのでしょうか。
そのヒントは、「父親が育休を取得したかどうか」ではなく、「どのように育休を使ったのか」にありました。
父親と母親では「同じ16週間」でも使い方が違う
2021年以降のスペインでは、父親と母親にそれぞれ16週間の有給育休が認められています。
ただし、16週間すべてを同じように取得する必要はありません。
出産直後の6週間は連続して取得する必要がありますが、残りの10週間は子どもが1歳になるまでの間に取得できます。一度にまとめて取得してもよいですし、複数回に分けても構いません。パートタイムで取得することもできます。
ここで父親と母親の違いがはっきりと現れました。
母親は、出産直後からまとまった期間、フルタイムで休む傾向が強い。一方、父親は育休を細かく分割する傾向が強くなっていました。
複数回に分けて育休を取得した割合は、父親では約50%だったのに対して、母親ではわずか6%でした。また、育休の一部をパートタイムで取得した割合も、父親が10%だったのに対して、母親は2%未満でした。
つまり、制度上は「父親も母親も16週間」と対称的になっていても、実際の使い方はかなり違っていたのです。
母親にとって育休は、出産直後の育児を担うためのまとまった休業になりやすい。
それに対して父親の場合は、仕事を完全に離れるのではなく、必要な時期に小刻みに使う柔軟な休業になっている可能性があります。
そして、ゴンサレス准教授らはさらに興味深い事実を発見します。