金持ちでないと子育てできない社会

その昔、シンガポールは高学歴(高所得)女性にだけ結婚と多産を推奨していました。他人に迷惑をかけずに子育てできる余裕がある人だけが結婚・出産をするべきで、その他の貧乏人は一代限りの人生を慎ましく全うしろ、というわけですね。

すごく偏った政策のように思えますが、長時間労働が常態化している日本も暗黙のうちにこの政策を採用しているのです。実際、正社員にもなれない低所得層の増加と未婚率の上昇はリンクしています。時短社員が居心地の悪さを感じるは、「残業できないのなら正社員であることを辞めろ。そもそも子どもを作るな」というメッセージを社会全体から受け取っているからではないでしょうか。少子化が進行するのは当然ですね。

誰もが残業せずに子育てもできる社会に転換するのか、「余裕のない共働きサラリーマンカップルは子どもを作るな。再生産は金持ちに任せろ」という社会がこのまま進行するのか。どちらかしかないと思います。「育児休暇を3年に延長」とか主張している安倍政権が続く限りは後者になってしまう気がするけれど……。

大宮冬洋
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。ビジネス誌や料理誌などで幅広く活躍。著書に『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)、共著に『30代未婚男』(生活人新書)などがある。
実験くんの食生活ブログ http://syokulife.exblog.jp/