議論がメイン、予習しないと“完全に詰む”

ミネルバでは、授業前に必ず予習課題が出されます。例えば心理学の授業なら、「認知バイアス」に関する15分の講義動画と、3本の論文を事前に読んでくることが求められます。学生はそれらの資料を自分のペースで学習し、重要な箇所にマーカーを引いたり、疑問点をメモしたりします。

そして実際の授業時間(通常75〜90分)では、教授は講義を一切しません。代わりに「では、昨日読んだ論文の事例を使って、あなたの国で起きている社会問題を分析してみてください。3分間でグループディスカッションしてください」といった具体的なワークが次々と出されます。

画面上では、教授がリアルタイムで学生の発言を聞きながら、「今の意見は論文のどの理論に基づいていますか?」「その前提には別の見方もあるのでは?」と問いかけていきます。つまり、知識のインプットは各自が授業前に済ませておき、授業時間はその知識を使って考え、議論し、実践する場になっているのです。

ある学生は「最初は予習の量に圧倒されましたが、授業で『読んだことがすぐに使える』感覚が病みつきになりました。知識が自分の武器になる瞬間を毎回味わえるんです」と語っています。

オンライン会議中の男性
写真=iStock.com/kokouu
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教授は答えを言わず、問い続けるだけ

ミネルバの教授は、学生に答えを与えることをほとんどしません。例えば経済学の授業で学生が「この政策は失敗だったと思います」と発言したとします。すると教授は「なぜそう思うのですか?」と問い返します。

学生が「失業率が上がったからです」と答えると、教授はさらに「失業率が上がった原因は本当にこの政策だけですか? 他に考えられる要因は?」「もし別の指標で評価したら、同じ結論になりますか?」と次々に問いかけます。

このように、教授は質問によって学生の思考を深掘りしていくスタイルを徹底しています。これは古代ギリシャの哲学者ソクラテスが弟子たちに用いた対話法で、答えを教えるのではなく、問いを重ねることで相手自身に気づかせる方法です。

ある授業では、気候変動について議論していた際、教授が「では温暖化を止めるべきだという前提自体を疑ってみましょう。もし温暖化が人類にとってプラスだとしたら?」という極端な問いを投げかけたそうです。学生たちは最初戸惑いましたが、この問いをきっかけに「誰にとっての『良い』なのか」「短期と長期で評価が変わるのでは」といった新しい視点に気づいていきました。

教授はこう説明します。「私の仕事は答えを教えることではなく、学生が自分の頭で考え続けられるように問いを投げ続けることです。卒業後、彼らの隣に教授はいません。だから自分で問い、自分で考える力を今のうちに鍛えるのです」