キャンパスがなく、世界を半年ごとに移動する
ミネルバ大学(Minerva University)は、2014年にアメリカで設立された私立大学です。創設者は教育起業家のベン・ネルソン氏で、「伝統的な大学教育を根本から再設計する」という理念のもと、既存の大学の問題点――高額な学費、固定化されたカリキュラム、講義中心の受動的な学び、限られたネットワーク――を解決することを目指しました。
ミネルバ大学の最大の特徴は以下の3点です。
【1.キャンパスがない】
物理的なキャンパスを持たず、学生は4年間で世界7都市(サンフランシスコ、ソウル、ハイデラバード、ベルリン、ブエノスアイレス、ロンドン、東京/台北など。年度により変動)を半年ごとに移動しながら学びます。各都市に学生寮はありますが、講義室や図書館といった伝統的な設備はありません。
【2.すべての授業がオンライン】
授業は専用のオンラインプラットフォーム「Active Learning Forum」で行われます。1クラス最大20人の少人数制で、教授と学生が画面越しにリアルタイムで議論を交わす双方向型の授業です。一方的な講義ではなく、学生の主体的な発言と批判的思考が常に求められます。
【3.実践的なカリキュラム】
ミネルバでは「Critical Thinking(批判的思考)」「Creative Thinking(創造的思考)」「Effective Communication(効果的なコミュニケーション)」「Effective Interaction(効果的な協働)」という4つのコアスキルを軸に、学問領域を横断した教育が行われます。座学だけでなく、各都市での実践的なプロジェクトやインターンシップを通じて、理論と実践を結びつける力を養います。
学生構成は極めて国際的で、1学年約150人のうち40カ国以上から学生が集まります。
日本人学生は各学年数名程度と非常に少数です。学費は一般的なアメリカの名門私立大学(年間1000万円以上)と比べると低く抑えられており、さらに奨学金制度も充実しています。
最初の卒業生はGoogleやマッキンゼーへ
ミネルバ大学の構想は、創設者ベン・ネルソン氏が「なぜハーバードやスタンフォードのような名門大学でさえ、真に革新的な人材を育てられていないのか」という問いを抱いたことから始まりました。
2011年、ネルソン氏は教育投資ファンド「Benchmark」などの支援を受け、ミネルバプロジェクトを立ち上げます。そして2014年、最初の学生を迎えて正式に開学しました。
開学当初から「世界で最もイノベーティブな大学」として注目を集め、初年度の合格率は2.8%と、ハーバード大学(当時約5%)を下回る難関校となりました。その後も毎年世界中から数千人の出願があり、合格率は1〜2%台で推移しています。
2017年には最初の卒業生を輩出し、卒業生の多くがGoogle、Microsoft、国連、マッキンゼーなどの世界的企業・機関で活躍するほか、社会起業家として独自のベンチャーを立ち上げるケースも多く見られます。
2020年のコロナ禍では、もともとオンライン授業を前提としていたミネルバのシステムが再評価され、世界中の大学が「オンライン教育をどう設計すべきか」を学ぶモデルケースとして注目されました。


