式典で「おことば」がなかった
しかも前例では、首相の式辞の後に昭和天皇が「おことば」を述べておられた。その一節にはこうあった。
100年に一度の式典に天皇陛下のご臨席を仰ぐのであれば、同じように陛下からおことばをいただくのが当たり前だろう。
しかし今回の式典では、なぜか陛下のおことばがあえて外されていた。この件はさすがに国会でも問題視された。
5月12日、参院外交防衛委員会で立憲民主党の田島麻衣子議員が、おことばがなかった理由について、厳しく追及した。政府側は「総合的に勘案し、ご臨席のみをお願いすることとしました」と、無内容な答弁を不誠実に繰り返した。
式典後、宮内庁の黒田武一郎長官は「(おことばが無かったのは陛下のご意思ではなく)政府の考え方に基づいた」とコメントした。
その一方で、「過去の歴史から謙虚に学び、深い反省とともに平和を守るために必要なことを考え、将来につなげる努力を続けることが大切」とのお気持ちで、両陛下が式典に臨まれたことを公表している。これは本来なら、陛下ご自身の「おことば」として、式典の中でうけたまわるべきものだったはずだ。
宮内庁の対応は、政府の無礼な姿勢を暗に批判したものだろう。
「高市氏による高市氏のための式典」
高市首相の式辞が、「日本列島を、強く豊かに」で締めくくられたのも、呆れた。これは自民党のポスターに使われているキャッチコピーだ。その前には、高市氏本人の著書のサブタイトルにも掲げられていた。
国民統合の象徴でいらっしゃる天皇陛下のご臨席を仰いだ政府式典で、“首相として”述べる式辞の中に、党派色・個人色を丸出しにするのは、公私混同であり、天皇・皇室の公正中立性を損ないかねない「政治利用」、とのそしりをまぬかれない。
式典で海上自衛隊東京音楽隊が「上を向いて歩こう」「なごり雪」など昭和の楽曲を演奏した時は、高市氏は両陛下の御前であることも忘れたかのように、ノリノリで身体を揺すりこぶしを突き上げていた。そんな姿も、心ある国民からひんしゅくを買った。
全体に高市氏の自己宣伝臭が強く、「高市氏による高市氏のための式典」とか「悪い意味でのサナエ劇場」などの評価が出てくるのもやむを得ない。