外交樹立60周年を迎えたシンガポール

愛子内親王が訪れるであろうシンガポールは、天然資源が乏しい小国でありながら、巧みな経済戦略によって東南アジアの物流や金融の拠点であるハブとして急速に発展し、日本にとっても極めて重要な国である。

シンガポールの経済・観光・金融戦略の象徴とされるマリーナ・ベイ地区
シンガポールの経済・観光・金融戦略の象徴とされるマリーナ・ベイ地区(写真=Bijay Chaurasia/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

そのため、外交樹立60周年を迎えた今年3月、戦略的パートナーシップへの格上げが行われている。ラオスとは段階が異なるが、記念の年に格上げというのは同じである。

それによって、先端技術やエネルギー、サプライチェーンでの連携などで両国は協力することになり、官民・企業間の連携強化などは多方面にわたることになる。

戦後、シンガポールを皇族が初めて訪れたのは1970年のことで、現在の上皇が皇太子の時代に夫婦での訪問だった。シンガポールの独立が1965年のことだったので、友好関係を確立するには重要な時期であった。

その後、2006年には外交関係樹立40周年ということで、当時の天皇夫妻(現・上皇夫妻)がシンガポールを訪れている。50周年の際には、今度はシンガポールの大統領夫妻が国賓として日本を訪れている。

「愛子天皇」待望論が共有されるワケ

本来なら、今回も今上天皇夫妻がシンガポールを訪れても不思議ではない。

だが、夫妻は6月に外交関係樹立160周年ということで、オランダとベルギーを国賓として訪れることになっている。そのために、愛子内親王がシンガポールを単独で訪問することになったのであろう。

果たしてこうしたときに愛子内親王以外に、天皇の名代を務められる皇族は存在するのだろうか。

第一の候補は秋篠宮夫妻ということになるが、そうなると、シンガポール側としても、関係が緊密になったにもかかわらず、軽視されたと感じるであろう。秋篠宮は皇嗣こうしであり、海外から見た場合、その立場はいささか曖昧である。そこが外交の難しいところである。

その点で、天皇夫妻の愛娘まなむすめである愛子内親王は天皇の名代としてうってつけである。何より、愛子内親王は年齢が若く、両国の関係の「未来」を感じさせる。その分、責任は相当に重い。そして、シンガポールでの注目度もかなりのものになることが予想される。

おそらく、シンガポールでも、「愛子天皇」待望論が日本で高まっていることが報道されるであろう。

その立ち居振る舞いに接したシンガポールの人々は、その理由を納得するに違いない。それが日本にどういった反響をもたらすのか、大いに注目されるところである。

島田 裕巳(しまだ・ひろみ)
宗教学者、作家

放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)、『教養としての世界宗教史』(宝島社)、『宗教別おもてなしマニュアル』(中公新書ラクレ)、『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)など著書多数。