「1カ月ルール」を破った「天皇特例会見」
2009年には、天皇の政治利用が大きな問題になった。
この年の12月15日、現在の上皇が天皇であった時代に、来日した当時の習近平国家副主席と会見したときのことである。その後、習氏は国家主席に就任し、現在でもその地位にある。
この会見がなぜ問題になったのかといえば、天皇と外国の要人が会見する際には、最低1カ月前までに申し入れるという「1カ月ルール」が慣習として確立されていたからである。
ところが、中国側から正式に習副主席の訪日日程を伝達してきたのは11月23日のことだった。それが1カ月ルールに反することは明らかで、26日に外務省から要請を受けた宮内庁は翌27日、それを拒否した。
政府もいったんは、天皇は健康がすぐれず、会見には応じられないと中国側に会見を断った。しかし、この時代に政権を担っていた民主党の鳩山由紀夫首相や小沢一郎党幹事長が、なんとしても会見を実現させようと奔走し、結局は会見が実現した。
この事態が進行中の12月11日、羽毛田信吾宮内庁長官は、記者会見で「政治的利用じゃないかといわれれば、そうかなという気もする」「国の間に懸案があったら陛下を打開役にということになったら、憲法上の陛下のありようから大きく狂ってしまう」「心苦しい思いで陛下にお願いした。こういったことは二度とあってほしくないというのが私の切なる願いだ」などと苦言を呈した。
オリンピック招致活動でも問われた政治利用
これは、いわゆる「政権交代」によって民主党政権が誕生して間もない時期のことで、各方面から天皇の政治利用ではないかという批判が巻き起こった。
しかし、民主党政権が瓦解した後、自公政権の下でも、皇族の政治利用ではないかという出来事が起こった。
それは2013年のことで、国際オリンピック委員会(IOC)総会において行われた高円宮の久子妃のプレゼンテーションが問題になった。これについて、羽毛田長官やその後任となった風岡典之長官は、「皇族は勝敗を伴うような争いごとの場に立つべきではない」「政治的に利用される懸念がある」と反対の姿勢を示した。
ただ、諸外国では王室がオリンピックの招致活動に参加するのは一般的で、オリンピック自体平和の祭典としての意味を持つ。久子妃も、プレゼンテーションにおいて、東日本大震災に対する各国の支援に感謝する内容に徹し、直接招致を呼び掛けなかった。
それでも、久子妃のプレゼンテーションは絶大な威力を発揮し、それが招致に結びつく一因になった。それだけ皇族の力は相当に大きく、当然それは愛子内親王についてもいえることで、またそれが強く期待されているのである。