妊娠中の任務で気付いた自分自身の思い込み

これは戦地だけの話ではありません。私たちの周囲にも、こんな「壊しどきのサイン」が潜んでいます。

・成果が出ていないのに、やり方を変えていない
・無理や犠牲が常態化していても、誰も疑問を口にしない
・過去の成功体験が、いまの柔軟性を妨げている
・上層部と現場の目標がズレている
・改善が惰性になっている

セルフスターターとは、こうした「小さな異変」から目をそらさず、必要なら壊し、新たに創り出せる人です。

私自身もあるとき、壊すべき「自分の思い込み」に気づかされました。壊すべきは、制度ではなく、まず自分のなかの前提でした。

妊娠中の私は、防災担当として現場に駆けつけることができないことに強い罪悪感を抱いていました。当時は、「妊婦や育児中の隊員は戦力外」という空気も、組織に残っていたのです。

ある日、人手不足で泊まりの勤務を頼まれ、無理を押して引き受けました。

翌朝、出血。流産を疑うほどの状況で、ようやく悟りました。「このままのやり方では、自分も子どもも守れない」と。

そこで私は「現場を離れる」のではなく、「役割のかたちを変えて残る」と決めました。

任務から退くのではなく、「いまの自分にできること」を探そうと腹をくくったのです。

「戦力外」のレッテルを自分で破り捨てられた

その矢先、上司の次の言葉が背中を押してくれました。

有薗光代『セルフスターター 自分で自分を動かすスキル 米陸軍工兵学校で学んだ仕事と人生で大切なこと』(日本実業出版社)

「訓練に行けるのがえらいわけじゃない。大切なのは、仕事の生産性だ」

張り詰めていた糸がふっと緩みました。私は、妊婦服のまま地域の防災計画を調整し、自治体や警察・消防との連携を進めました。結果として、妊娠中でありながら、過去に例のない「最高評価」のボーナスをいただくことになりました。

そして、それ以上に大きかったのは、自分のなかの「戦力外」というレッテルを自分の行動で破壊できたことでした。

あの上司のひと言がなければ、私は早くに退職していたかもしれません。

人は、環境ではなく「意味づけ」で動く生き物です。言葉ひとつで、人は自分の限界を塗り替えることができる。

人生には、思いがけず立ち止まらざるをえない瞬間があります。けれども、そのときに「もうダメだ」で終わるのか、それとも「ここから創り出そう」と思えるのか。その選択こそ、セルフスターターの呼吸です。

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