顔と名前を覚えるのが苦手という人は多い。記憶力世界一に輝いたことのあるメモリーアスリートの平田直也さんは「記憶の中でも顔と名前の記憶は難しい部類に入る。苦手なのは記憶力が悪いせいではない。ちょっとした工夫を続けることで向上する」という――。
名刺交換をするビジネスパーソン
写真=iStock.com/Satoshi-K
※写真はイメージです

誰よりも早く取引先の顔と名前を覚えられる

メモリーアスリートの平田直也と申します。

メモリーアスリートとは、「メモリースポーツ」という競技の選手を指す言葉です。メモリースポーツは、記憶力を使ったさまざまな種目を通じて順位を競い合う頭脳競技です。

1991年にイギリスで誕生し、以降世界中で大会が開催されており、現在の競技人口は数百万人以上と言われています。

メモリースポーツでは「その場で、短時間で、どれだけ多くの情報を覚えられるか」という能力が競われます。15分間でランダムに並んだ数字の羅列を覚える種目や、5分間で初見の人の顔と名前を覚える種目などがあります。

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私はこのメモリースポーツを2016年からやっており、毎日記憶のトレーニングを行い、大会に参加してきました。とくに「顔と名前」の種目が得意で、2018年の日本大会では「5分間で41人の外国人の顔と名前を覚える」という当時の日本記録を樹立したり、1分間で30人の顔と名前を覚えるという記録を出したりしています。

また、オンラインで対戦する形式のメモリースポーツでは、2019年に世界ランキング1位を達成しました。

もちろん現実世界でも記憶力を活用しており、名刺交換や自己紹介の場では誰よりも早く取引先や新しい同僚の名前などを覚えることができています。

もともとの記憶力は関係ない

このように聞くと、元々記憶力が良かったのかと思われるかもしれません。しかし、メモリースポーツで競われる記憶力に、元の記憶力は実は関係ありません。後天的にトレーニングによって鍛えられる記憶力で競われているのです。世界中のどの選手も「記憶術」と呼ばれる記憶のテクニックを学び、日々実践することで記憶力向上に努めています。

顔と名前を覚える種目の過去問の一部
画像提供=日本メモリースポーツ協会
顔と名前を覚える種目の過去問の一部

私もこの10年間、毎日のように記憶のトレーニングを行い、覚えられる数を増やし続けています。顔と名前に関しても、今年だけで1万人以上の顔と名前を覚える練習をしてきました。意外に思われるかもしれませんが、顔と名前を覚える能力は、練習して獲得するものなのです。

私は現在もメモリーアスリートとして大会に参加しています。そしてその知見を広めるためにメモアカという会社を起業し、小学生からシニアまで幅広い方々に記憶術を教えています。

多くの記憶のテクニックの中から、今回は社会人が最も必要としている「顔と名前を覚えるコツ」を紹介していきます。