読み聞かせは小学生にも有効
最もワーキングメモリに負担をかけずに、脳が心内表象化の働きに特化できる読書は「読み聞かせ」です。
「音韻符号化」を誰かに任せるわけですから、聞き手の子どもたちはその情景を思い浮かべること、あるいはストーリーの流れや登場人物の性格などの構造の記憶を保持しながら、次々と耳に入ってくる新しい情報の「理解」に集中できるのです。
言い換えれば、読み聞かせは聴覚からの心内表象化のトレーニングになります。
これらの能力(心内表象化や音韻符号化)は反復によって自動化されます。
聴解力が高い人は、ぼんやりと周囲の音声を耳にしているだけでも内容が理解できますし、同時に読む力に優れている人たち、我々も含め、文字を読むことはほぼ自動化されているので、ここにワーキングメモリを使うことはありません。
したがって、通常は読むといった意識はしないまま、内容の理解に集中できるのです。
ただし、それは大人の話。ここでの対象の子どもたちは「読む」ことの自動化はできていても、「理解」の自動化ができていないと考えておくのが妥当でしょう。
聴覚からの心内表象化には、もちろん知覚力も関わってきます。
その知覚力のベースを成すのは語彙力でした。
読書量は語彙の豊かさと相関関係にあります。つまり読書量が多ければ多いほど、知覚・理解の両方に優れることになります。
しかし、その入口の「聴解力」が育たないまま、「読解力」へ進ませようとすると、肝心の「理解力」が置き去りになってしまう可能性があるのです。
海外の映画などを見ていると、小学校中学年、あるいは高学年かとも思しき子どもたちに、親が本を読んで聞かせている場面に出会ったりします。
耳からの理解力、つまり聞いた内容を心内表象化する能力の育成は、幼児期はもちろんのこと、小学生になっても有効なのです。
心内表象化の能力を育てる絵本の読み方
ワーク絵本読みの作法と絵本のその先
心内表象化の能力を育てるために、絵本を読む際に心がけることがいくつかあります。知っておきましょう。
①指差しをしない
文字の指差しも、絵の指差しも不要です。子どもの仕事は絵を眺めながら、耳を傾け意味を把握することです。脳の中はブラックボックスと書きましたが、絵本読みをしているときに、子どもが何を思い浮かべ、どの箇所を見ているのかは気にしなくていいのです。
②説明しない
絵本は絵本自体で完結しています。母親の音声と眼の前の絵の世界、それと子どもの頭の中に結像しているイメージがあれば十分です。
理解を促すために説明をしているつもりでも、その説明を理解しているかどうかは分かりません。それであれば、子どもの自由に任せるのが一番です。もちろん、子どもが絵本読みの最中に内容について話してくることもありますが、そんなときは「そうなのね」と軽く流して、先に読み進めましょう。
③内容について聞かない
内容について後で質問するのは厳禁です。子どもが話をしてくるのであれば、自由に話をさせてあげれば良いでしょう。理解がズレていたとしても、あまり指摘する必要はありません。もし、絵本読みのたびに親が内容を確認するようなことがあると、子どもは身構えてしまいます。すると、理解ではなく記憶しようとするのです。これは避けましょうね。
④絵本を卒業したらオーディオブック
小説、物語、落語などは耳からの理解力を高めるのに適しています。オーディオブックのサービスを利用すれば、プロのナレーターが朗読した音声で多種多様な本に触れることができます。手軽に取り組めるので、テレビを消して、ゲームやスマホの代わりに、ひとり遊びのとき、工作をしているとき、実験をしているときなどに背後に流しておきましょう。


