未就学児への読み聞かせは効果がある
また、未就学児に対する家庭での読み聞かせが、その後の子どもの語彙力や読解力に肯定的な影響を及ぼすことも報告されています。
未就学児に対する絵本などの読み聞かせの量と、就学後の国語の成績を調査した研究において、多く絵本を読み聞かせたグループは、小学校中学年以降の国語の成績が、そうでないグループに比べて有意に高いそうです。
知性に関しては、もちろん生まれつきの要素もあります。また、言語使用の素質としての脳の基本的構造は遺伝子によって作られます。しかし、その後、環境による刺激から、脳の回路が改良されていくのです。
この考え方は幼児期に行う本の読み聞かせ、あるいは学童期になってからの読書、特に説明文の読み込みが、子どもたちの理解力を高めていくのに役立つという研究結果と符合します。
読んだ先から内容がスルスル抜け落ちてしまうワケ
読書をしている脳は、まず文字を音声に置き換える作業(音韻符号化)をします。
同時に文の構造を理解します。
最後に、書かれている内容を映像化させる、つまり心内表象化(理解)します。
さらにすでに行われた理解の記憶を保持しながら、目の前の文の意味(文脈)を把握していきます。
意味を理解する作業をしつつ、次から次へと目に入る文字の音韻符号化と心内表象化をくり返して、積み上げていくわけです。
ここで重要なキーワードは「ワーキングメモリ」です。ワーキングメモリとは「今やっていることを、一旦記憶にとどめておく能力」のことです。
読むことと理解すること、この2つを同時に行うことはワーキングメモリにとっては大変な負荷がかかる作業です。ワーキングメモリが鍛えられていないと、読んだことが、読んだ先からスルスルと抜け落ちていくイメージになります。
結局、「なんの話だっけ?」となるわけです。それでは意味がありません。
読む内容によっては、ワーキングメモリの負荷はずいぶん軽減されます。
たとえば、絵本は絵が与えられているので、情景に関する心内表象化をする必要がありません。音韻符号化とストーリーや登場人物間の構造に注目する理解に集中できます。
また、少し挿絵がついている程度の読み物も、未知語(意味を知らない初めてみる語)の推測や理解(心内表象化)に役立ちます。
物語などは説明文に比べて抽象度が低く、一般に筆者が心内表象化を容易にするような表現を駆使するので、これも教科書的な説明文よりはワーキングメモリの負荷が低いでしょう。

