「やめる経験」が挑戦する勇気を与える

「置かれた場所で咲きなさい」という言葉があります。

この言葉は、どんな環境でも最善を尽くし、その環境に順応する努力を惜しまないことの大切さを教えてくれます。

ただ、私はその考え方には全面的には賛成しかねます。

たしかに、どんな場所でも最善を尽くすことは大切ですが、それが「無理をしてでも続けなければならない」という圧力に変わってしまうと、逆に自分を犠牲にしてしまうことになりかねません。

「一度決めたら、やり直さない方がいい」
「始めたからには、やめてはいけない」

そんな思い込みは、子どもたちから挑戦する勇気を奪い、前に進む一歩をためらわせます。

だからこそ私は子どもたちに、

「いつでもやめていいよ」
「物事は何度でもやり直せるんだよ」

と伝え続けてきました。

そう思えたほうがきっと、失敗を恐れずにのびのびと挑戦でき、気負いすぎることなくトライ&エラーを重ねることができるはずです。

嬉しそうな女子中学生
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

親の限界も伝えよう

ただし、習いごとや受験にはお金がかかることも事実です。

普川くみ子『10代の子どもの心の守りかた』(実務教育出版)
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無制限に挑戦したりやめたりするのは、現実的に難しいでしょう。だからこそ、まずは親子での対話が大切です。

「何でも応援するって言ったのに」というトラブルを避けるためにも、12歳をすぎた頃から、少しずつお金の話をしていくのも大切です。高校生くらいになれば、家庭の経済状況もある程度は理解できます。

たとえば、「あなたがやりたいことは全力で応援する。ただ、それがお金のかかることなら、本当に興味のあることかどうか、自分でもよく考えてみてね」と伝えたり、「まずは体験から始めて、続けられそうか判断しようか」といったやりとりも有効です。

そして、子どもが「やっぱりやめたい」と言ってきたときには、「続けるって言ったのに」などと責めるのではなく、「やってみたからこそ分かったんだね」などと、ポジティブな言葉で子どもの経験を“学び”に変えてあげてほしいのです。

そうした経験を重ねることで、子どもたちは「人生にはたくさんの選択肢があるんだ」「何度でもやり直しができるんだ」ということを、実感として学んでいくのです。