「スマホの普及」の意外な影響

令和の時代になってからは、極端な、悪ふざけのような「ギャグ名前」はほとんど姿を消しました。ただし、

花夏(かな) 颯人(はやと) 稜空(りく)

などのように、耳で聞けば普通の名前で、漢字で書かれると読めない名が多いのです。男女不明、男女さかさまの名前も増え続けています。ただしこれはほとんど男の子につけられています。先の「たまひよ」のランキングでも、女の子の中にはなく、男の子のよび名には、あお、あさひ、なぎ、はる、そら、りつ、など6つも見られます。

これらの物理的な要因としてはスマホの普及があげられます。名づけとなるとスマホをいじる、というのは普通の光景になっています。スマホの名づけのサイトには、読めない名前、男女を間違える名前があふれ、その中から名前をさがす人も多いわけです。

スマートフォンを使用している女性の手元
写真=iStock.com/Sayaka N
※写真はイメージです

なぜ「読めない名前」が増えているのか

しかし無意識の世界で起きている心理的な背景となりますと、これもやはり何かの欠乏でしょう。

今、名づけをしている親たちは、高度成長期と逆に、平成不況の中で育っています。受験競争でがんばってみてもバラ色の未来など約束されず、災害も多発し、予想外の生き方を強いられた人も多いのです。一人一人が自らの生き方を模索しなければならず、生きざまも多様になっていて、奇抜な名づけで個性を示すという発想はありません。

それよりも個人情報がどこでどう使われるかわからず、詐欺という言葉が誰にとっても他人事ではなく、皆が内心ビクビクしながら毎日をすごしています。

こうなると名前のほうも、個人が割れやすいキラキラネームではなく、友人知人にしか読めない、正体のわかりにくい名前のほうが安心感があるわけです。平成以後の社会で欠けているものは「安全」「安定」であり、令和の名づけの背景にあるのは、不安感、警戒心ではないかと思われます。