安全性の高いアセトアミノフェン

アセトアミノフェンは、古くからある薬で、これまでに何度も大規模な研究がされています。9月22日、科学雑誌として世界で最も権威のある『Nature(ネイチャー)』は、そういった今までの研究をもとにトランプ氏の発言を直ちに否定しました。今回の発表は科学的根拠が乏しいこと、FDAは関連性の「可能性」に言及しつつも、研究者らは因果関係を裏付ける証拠はないと指摘、大規模コホート研究でも関連は極めて小さいか、兄弟比較では消失しているという内容です。専門家は、こうした主張は妊婦の不安をあおり、不要な罪悪感や誤解を生む危険があると警告しています。

ここで引用されている論文には、スウェーデンの248万人を対象とした妊娠中の母親と出生後の子どもの研究、日本の20万人以上の子どもを対象として兄弟姉妹間でも比較をした質の高い研究があり、妊娠中のアセトアミノフェンと自閉症の間には関連性はみられなかったということです。

もちろん、子ども自身がアセトアミノフェンを飲んで、自閉症になるということもありません。生後18カ月までに与えたアセトアミノフェンが自閉症様症状と関連がなかったという大規模な研究が複数あるのです。

むしろ、アセトアミノフェンは妊婦さんや子どもにとって最も安全性が高い薬です。昔は子どもや妊婦さんの発熱に、他の解熱鎮痛薬が使われることが多々ありました。しかし、時代とともにさまざまなリスクがあることがわかり、アセトアミノフェンが使われるようになったという歴史があるのです。

体温計、発熱した子供
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NSAIDsのさまざまなリスク

じつは、大人に解熱鎮痛剤としてよく使われるアスピリンやロキソニン、ボルタレンなどの「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:エヌセイズ)」は、年齢制限があるため小さい子どもには使えません。特にアスピリンは、1980年代までインフルエンザや水痘などの子どもに飲ませることがよくありましたが、急性脳症などの重篤な症状を引き起こす「ライ症候群」のリスクが高まるため、原則的に禁忌となりました。

さらにNSAIDsには、インフルエンザ脳症や熱性けいれんを起こしやすくなるというリスクがあるだけでなく、子どもの未成熟な腎臓によくないうえ、胃と十二指腸の粘膜が痛み胃痛や嘔吐、下血、胃潰瘍などを起こしやすいことなどからすすめられません。これは、内服だけでなく湿布のような外用薬でも同様です。

また、妊娠中の女性がNSAIDsを服用すると、妊娠初期には流産のリスクが増します。また、他の時期でも羊水過少になったり、胎児の動脈管が閉塞して心不全になったり、その程度がひどいと亡くなることがあります。だから、妊娠中の女性、子どもの解熱鎮痛薬として使うことができるのは、ほぼアセトアミノフェンだけなのです。

なお、妊婦さん以外の大人でもアセトアミノフェンを飲んだほうがよいことがあります。関節炎のような「肩が痛い」「腰が痛い」という際にはNSAIDsがよいと思いますが、インフルエンザや新型コロナの場合はNSAIDsではなく、アセトアミノフェンが処方されることが多いでしょう。胃腸や腎臓への負担が少なく、ウイルスとの相互作用が少ないからです。脱水や循環不全がある場合でも、アセトアミノフェンなら比較的安全です。