ネットで調べるだけでなく野外で自然を観察しよう
そんな生き物大好き少年が、鳥を研究のテーマに選ぶきっかけとなったのは、高校生のときにお年玉で購入した双眼鏡だ。ムクドリの群れやツバメの巣作り、カワセミの子育てなど、鳥たちを驚かせることなくじっくりと観察できるようになり、飽きることなく何時間でも見ていられた。
「双眼鏡で鳥たちの暮らしを覗くのと、プラケースの中で飼っている生き物たちを観察するのとではまったく違っていました。プラケースは自然の一部を切り取ったもので、そこには天敵もいなければ、餌も僕が準備してやる。それに対してバードウオッチングは、こちらから自然に入っていく行為なんですね。天敵もいるし、餌を見つけるのも簡単じゃない。そんな中で彼らは社会を形成している。それがすごく面白かった」
小学校低学年の頃から生物学者になりたいと思っていた。それはもちろん、生き物が好きだったからだ。けれど鳥の観察を始めたことで、自分が何を知りたいのかがはっきりとわかった。「人間以外の動物が何を考え、この世界をどのように見ているのか」。それを解き明かすために研究者になろうと心に決めた。
同じく研究者を目指す子供たちには、わかっていないことを解き明かすことが研究の醍醐味だと伝えたいという。
「いまは、わからないことがあると何でもインターネットで調べられる。けれどネットに書かれていることよりも、書かれていないことのほうが現実には多い。どこにも書かれていないことに気付くには、多感な子供時代にとにかく野外に出て、まわりを観察することが何より大切です。自然との関わりの中でしか得られないものがあります。そこで出合ったわからないことを一つずつ解き明かしていけば、世界の見え方が変わってくる。それこそが研究の面白さだと僕は思っているんです。そうした周囲を観察する力やわからないことを解き明かす思考力、行動力は、研究者を目指さない子供にも将来役立つ課題解決力を育むだろうと考えています。自由研究がきっかけでもいいと思います。ぜひ夏休み、自然の中へ出かけてください」
※本稿は、『プレジデントFamily2025夏号』の一部を再編集したものです。



