「ここは騒いでも大丈夫ですよ」と伝えるワケ
診察室でも、騒いでいるお子さんに、親御さんが「やめなさい!」と声を荒げ、子どもが「ごめんなさい」と(とりあえず)謝る場面を見ることがあります。でも、しばらくするとまた同じ行動が繰り返されるのです。一時的に収まっても、解決になっていないことがほとんどです。
そんなとき、私は「ここでは騒いでも大丈夫ですよ」とお伝えしています(ただし、クリニックでも入ってはいけない場所があるので、そこはきちんと伝えます)。
とくに多動や衝動傾向の強い子は、診察室にある長イスに寝転がったり、足で壁を蹴ったり、長イスの上に立ち上がったりすることもありますが、そのときも叱りません。「座れるかな?」「話はできそう?」などと声をかけたり、ときには寝っころがったまま話を聞くこともあります。
なぜなら、「じっと座る」という行為は、その子の特性上、難しいとわかっているからです。この特性を理解していたら、「怒る」という選択肢にはなりません。
10秒でも座っていられたら思い切りほめる
きっと親御さんは、こちらに失礼だとか、迷惑をかけるとか、騒いで申し訳ないとか、さまざまな思いから「怒る」という行動を選択する方もいるでしょう。
しかし、怒ることでその場しのぎになるだけでなく、子どもが苦しむこともあるのです。
多動や衝動傾向の強い子は、幼少期から叱られる体験や否定される体験が積み重なることが多いので、自分はダメな人間だという自己イメージができ上がってしまいがちです。
これはどんな子どもにも共通して言えることですが、多動や衝動傾向が強いお子さんに対してはなおさら、「できないこと」に目を向けるのではなく、「できたこと」に注目して、その子のがんばった姿勢をしっかりと認めて評価することが大切です。
たとえば、座っていなければいけないときに立ってしまう子が、1分でも、いや10秒でも座っていられたら、「ちゃんと座れているね、すごいね」とほめる。
立ち上がってしまったときに叱るのではなく、立ち上がっていないときに「ちゃんとできているね」としっかり注目してほめると、やはり子どもはうれしそうな顔をします。

