転勤のときに、その地方がどういう特色をもつかは、徹底的に調べます。私の経験上、とくに東名阪の大都市圏を除いた地方都市では、それぞれの県民性、商習慣、歴史に合わせたアプローチをとったほうが、地域にスムーズに入り込めるように思います。

営業を進めるうえでの基本的な考え方は全国共通です。大前提は、顧客の立場にたって、問題解決を図ること。野村証券には、株式や投資信託など有価証券の取り扱いだけでなく、事業承継や相続、本業に関する相談にも応じられる体制があります。ただし、そうした具体的な話を深めるには、相手との距離を近づける必要があります。

「◯◯県の人は□□だ」とひとくくりにはできませんが、最大公約数的な特徴は間違いなくあります。

たとえば赴任の経験がある山形や青森の印象では、東北の人は実直かつ勤勉で、人とのつながりを重んじる方が多いように感じました。また資産運用については、リスク許容度が低く、コスト意識が高い。新規案件への警戒心も強いため、人からの紹介が重要です。

地方での営業のカギは、経済の中核となる企業や組織を押さえることです。行政、金融機関、メディア、医療業界、自動車ディーラーや石油関連業界などに、地元の「キーマン」がいることが多い。経済規模が大きくないため、そうした有力者たちは一種の「インナーサークル」をつくっています。赴任後には、まず各方面のキーマンと親密になる必要があります。とくに東北では、紹介の輪をつなぐための第一歩になります。

また、その土地の歴史を知っておくと、思わぬ「地雷」を避けることができます。たとえば青森では「ねぶた祭り」が有名ですが、これは青森市で開かれる祭りです。一方、八戸市では人形山車による「三社大祭」が有名で、八戸で「ねぶた」の話ばかりをすると逆効果。また弘前市の祭りは「ねぷた」と濁らないため、注意が必要です。