2013年6月11日(火)

「領収書改ざん」が会社にばれたらどうなるか

一生を棒にふるトラブル【領収書改ざん】

PRESIDENT 2011年12月19日号

著者
小川 英郎 おがわ・ひでお
弁護士

1962年、大阪府生まれ。85年京都大学法学部卒業。共同通信社記者を経て、94年司法試験合格。97年弁護士登録。ウェール法律事務所所属。現在、日本労働弁護団常任幹事。著書に『労働基準法がわかる事典』など。

弁護士 小川英郎 構成=宮内 健
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領収書を改ざんして会社に経費を支払わせた場合、厳密には、刑法の詐欺罪の構成要件に該当してしまう。詐欺とは人を騙して財物を交付させる行為で、領収書の改ざんは嘘の経費を会社から騙し取ろうとする行為にほかならない。

仮に会社が途中で気付き実際にお金が支払われなかった場合でも、詐欺未遂で処罰の対象になりうる。もし架空の領収書を1からつくった場合は、私文書偽造にも問われる可能性がある。

もちろん改ざんが発覚したからといって、いきなり起訴され、刑事裁判に発展するというわけではないが、金額の多寡にかかわらず詐欺罪の構成要件に該当することには留意したい。

長年にわたって領収書を改ざんするなど悪質で金額も見過ごせないと判断すれば、会社は詐欺として刑事告訴することに加え、損害賠償や返還請求という民事上の措置をとることもありうる。

さらに当然、懲戒処分もある。領収書の改ざんは典型的な懲戒事由になるので、場合によっては懲戒解雇、そこまでいかなくても諭旨退職や出勤停止、減給など何らかの制裁が加えられるだろう。

懲戒については一定のルールがある。まず、会社は就業規則で懲戒の規定をあらかじめ作成し、労働者に周知しておかなければならない。就業規則をきちんと知らせないまま懲戒処分を行った会社に対し労働者が争った裁判で、最高裁は「処分は無効」であるとの判決を出している。したがって、まず会社で就業規則が整備されていて、そのなかに懲戒の規定がなければ懲戒処分はできない。働く側の立場としては、普段から自社の就業規則はどうなっているのかをしっかり確認しておく必要がある。

通常、就業規則のなかには懲戒の章が設けられており、どのような行為を懲戒するか(懲戒事由)にかかわる条文があり、そこには金銭上あるいは経理上不明朗な行為をした場合が入っている。明確にそういう条文がなくても、最後に包括的条項が入っていて、一般に悪質的とされる行為をした場合は処分できるようになっている。

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