金額が大きいなら刑事告訴の可能性も

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改ざんがばれたとき、処分を分けるポイントはココ

ではどのような処分になるのか。会社は懲戒権を持っているが、無制限に処分を行えるわけではない。懲戒にはいくつかのルールがあって、最も重要なのが「相当性」の原則である。要するにやった行為と処罰のバランスが取れているかということで、裁判所で争われた場合これが審査の対象になる。

懲戒処分で一番軽いのが戒告、譴責で、減給、出勤停止、諭旨退職、懲戒解雇とだんだん重くなる。このなかのどれにあたるかを会社が決める際には、労働者の問題ある行為だけでなく他の要素も考慮しなければならない。

たとえば、それまでの勤務態度や会社に対する貢献度合い。あるいは過去の処分歴、改ざんの動機や計画性、常習性、金額の多寡も処分に大きく影響する。

また、社内の体制も重要である。領収書の改ざんをみんながやっていて社内の規範意識が麻痺している状況だったのか、それともほかにそんなことをする人は誰もいない状況かで処分の重さは変わってくる。

改ざんをやっている人が何人もいるような職場で、過去に懲戒処分を受けたことがなく真面目に働いてきた人が1000円程度の領収書改ざんをしたからといっていきなり懲戒解雇したら、あまりに処分は重すぎるだろう。こうした場合、処分をめぐり裁判になったら会社側が負ける可能性が高い。

刑法上、詐欺罪は10年以下の懲役に処されるが、実際に10年の懲役になることはまずない。初犯であればたいてい執行猶予になるので、よほどのことがない限り懲役に行く可能性は少ない。

会社もよほど悪質でない限り、刑事告訴まではしないのが通例。一概には言えないが刑事告訴されるとしたら常習性があり巧みに改ざんを隠し、金額も100万円単位にのぼるような場合だろう。数万円単位であれば刑事告訴はせず、厳しいところでも、諭旨退職や懲戒解雇し、退職金を出さない形で会社を辞めてもらおうとするのが一般的ではないだろうか。

(構成=宮内 健)
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