通読レベル2

小宮コンサルタンツ代表取締役 
小宮一慶氏

通読レベル2は楽しむより、勉強に重点を置いた読書法です。通読レベル1で本を読み始めて、これは深く読んだほうがいいぞと思ったらレベル2に上げることもあります。

レベル1とレベル2の違いは本の重さ、内容の重さです。論理レベルの深さと言ってもいい。決して通読レベル1の本の中身が浅いという意味ではありません。レベル1の本も実は奥が深いのだけれど、そこまで読み取れなくても、読み手のレベルに応じてそれなりにわかるように書かれている場合が多い。

しかし通読レベル2の本はそうはいきません。最初から深く読み込んだり、気合を入れて読まないとわからないようにできている。だから本に線を引いたり、感じたことをメモしながら論点を整理し、考えながら読んでゆく。私にとっては論理的思考力やひらめきを生む重要な読書法です。

このレベルでどのくらいの本を読むかで、通読レベル1や速読で読む本から読み取れるインプット量やそこから生まれるインスピレーション量も増えていきます。知識の基本、論理思考の基本ができ上がってくるからです。

一流の学者が一般向けに書いた本や、超一流の経営者の本がこの読み方にふさわしく、論理思考に優れた人の論理を追っていくことで、読む側の論理的思考力のレベルを上げていくことができます。

たとえば、慶応大学の竹森俊平先生の『経済論戦は甦る』という本があります。小泉改革のさなかにデフレが進み、デフレや景気後退がいいのか悪いのかという論争が起きたときに出版されました。この本は、20世紀初頭の経済学者、フィッシャーとシュンペーターの論戦になぞらえて、現実社会と理論を絡ませながら書き進められています。シュンペーターは、不況は長期的視点に立てば世の中がよくなっていくためには必要だという論理。一方、フィッシャーは、不況がさらに世の中を悪くしていくという論理で、金融政策を講じずに放っておくとデフレスパイラルに陥り、やがてメルトダウンすると主張しています。この論戦は、昔から現在にいたるまで同じ議論が繰り返されていると分析され、本質的なところを理解できて感動します。