「効かねぇなあ」麻酔なしでの盲腸手術
【鈴木】そこからまず体の前側に部分麻酔を打って、そこをつねるんです。僕が「痛い」って言ったら「効かねぇなあ」と。今度は背中から全身麻酔するんだけど、これも効かない。お腹が痛いから神経がいら立ってピリピリしてるんだよね。それで医者が「誰でもいいから、いるやつ全員呼んでこい」って命じて、16人が集まった。その人たちに「おまえは頭の真ん中、おまえは左耳、おまえは右耳、おまえは肩」って僕を押さえつけさせて、的確な指示をして「じゃあ切るぞ」と。
【叶井】えー! 麻酔は⁉
【鈴木】ないのよ。「先生、勘弁して! 勘弁して!」「うるさい!」ブスッ!
【叶井】そんなのあります⁉
2時間遅かったら死んでいた
【鈴木】そこで驚くべきことが起きた。痛くないのよ。「え? 今切ったんですよね? 痛くないんですけど」って聞いたら、「当たり前だ。中のほうがもっと痛いんだから、切ったって痛くないんだよ」って言うんだ。
【叶井】鈴木さん、普通にしゃべってたんだ。
【鈴木】4時間くらいかかったかな。単なる盲腸じゃなくて膿が出ちゃってたから、手術の途中でインターンを呼んできて「こんなケースは珍しいから、よく見ておけ。あと2時間だったな」って話してるんですよ。2時間遅かったら膿が心臓に達して死んでいた、と。僕が「先生、手術中に勘弁してよ」って言ったら「うるせぇ、歌でも歌ってろ」って言われて、しょうがないから歌ったの。
【叶井】そんなことあるんですか。意識がありながら手術って。