「坂本龍一の死」が重く迫ってきた

【叶井】なるほど。僕は仲いい人が死ぬ経験がまだ、あんまりないので分からないですね。

【鈴木】節目節目でそういうことがあった。で、年を取るとね、少し変わってくるんだよね。そんなに親しかったわけじゃないんだけど、ひょんなことで坂本龍一さんと仲良くなったんです。

彼から声をかけられて、映画音楽について2人で話すイベントをやって、予定が1時間のところを2時間しゃべったのかな。ものすごく楽しい時間だったんだよ。その後もコンサートに呼んでいただいたり、メールのやり取りをしたりしていて、もう少し会って話したいなと思っていたけれど亡くなってしまった。

そのときに何かが襲ってきたんですよね。彼の死が重く迫ってきた。そういうことは今まで経験がなかったから「年かな」って思いました。年を取ると当然そういうことが増えますよ。高畑さんは「やりたいことがまだいっぱいあるんですよ」って言いながら死んでいった。

【叶井】そうだったんだ。

「宮崎駿なんか見ていると、やっぱりしぶといよね」

【鈴木】やりたいことがある人は無念だろうなって気がする。宮崎駿なんか見ていると、なんていうんだろう、やっぱりしぶといよね。

宮崎駿監督(2015年7月13日撮影)
写真=AFP/時事通信フォト
宮崎駿監督(2015年7月13日撮影)

【叶井】宮崎監督は次回作も何か考えていたりするのかな。

【鈴木】この映画次第だと思う。『君たちはどう生きるか』(23)がヒットしたら、かな。

【叶井】もうヒットしてるじゃないですか!

【鈴木】いや、あの人は欲張りだから。

叶井俊太郎『エンドロール! 末期がんになった叶井俊太郎と、文化人15人の“余命半年”論』(サイゾー)
叶井俊太郎『エンドロール! 末期がんになった叶井俊太郎と、文化人15人の“余命半年”論』(サイゾー)

【叶井】興行収入100億円いく勢いじゃないですか。もう大ヒットだと思いますね。どのくらいまでいったらヒットなんでしょうか?

【鈴木】分からないけど、ヒットしたと自分で思えたら、またやりたいんじゃない? だからヒットしなかったらやめちゃう。たぶんそうだと思います。

【叶井】宮崎監督の中でヒットの基準があるんだね。でも、すでに社会現象に近いじゃないですか。

【鈴木】おかげさまで、ありがたいです。

【叶井】それにしても、まったく宣伝しないって手法はすごかったですね。

【鈴木】年取ったからさ……。

【叶井】あはは、めんどくさかったんですか?

【鈴木】(顔をしかめる)

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