心理状況まで客観的にメモする

私の心に深く刻まれている稲盛さんの言葉に「動機善なりや、私心なかりしか」があります。これは、稲盛さんが84年にKDDIの前身であるDDI(第二電電企画)を創業したときの言葉です。「動機善なりや」とは、大きな夢を描き、それを目指すとき、その動機が誰から見ても善きことなのかを徹底的に自問自答せよということであり、「私心なかりしか」とは、利己的な発想で仕事を進めていないかを常に点検せよということです。

Businessman Writing in Planner at Cafe Window
写真=iStock.com/shironosov
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私自身、新たな仕事に挑戦する際は、いつもこの言葉を肝に銘じています。そして、仕事を成功させる要諦を、これほど簡潔な言葉で表される稲盛さんという人物の偉大さを、あらためて感じています。

私は1991年に稲盛さんの秘書となり、約25年間にわたって、その傍らで仕事をしてきました。秘書になる以前、私の稲盛さんに対する印象は「天才肌で剛腕、そして剛毅果断の人」でした。しかし、ある出来事をきっかけに、その印象は大きく覆されました。

秘書になって数年ほど経ったある日、稲盛さんから「自宅に手帳がたくさん残っている。整理してもらえないか」と依頼を受けたのです。