2011年8月30日(火)

難度の高い症例も「勝てるなら受ける」

名医が語る、頼れる医師の条件【2】

PRESIDENT 2011年1月3日号

著者
松井 宏夫 まつい・ひろお
医学ジャーナリスト

1951年、富山県生まれ。中央大学卒。週刊サンケイ記者を経て、フリーに。医療分野を中心に活動し、日本医学ジャーナリスト協会の幹事を務めている。

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医療ジャーナリスト 松井宏夫=文 撮影=尾崎三朗
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“断らない・待たせない・温かい”――。これをモットーにして誕生し、地域医療に貢献しているのが、愛知県名古屋市にある名古屋ハートセンターだ。循環器専門病院で、24時間あらゆる成人心臓血管病に対応している。その心臓血管外科チームを率いるのが心臓外科のスペシャリスト、米田正始副院長(55歳)である。他の病院では引き受けようにも引き受けられない、大学病院クラスでないと手の出せない患者も多く受診する。

<strong>米田正始</strong>●名古屋ハートセンター副院長。1955年、奈良県生まれ。81年京都大学医学部卒。天理よろづ相談所病院、トロント大学、スタンフォード大学、メルボルン大学を経て、98年京都大学医学部教授。2008年より現職。
米田正始●名古屋ハートセンター副院長。1955年、奈良県生まれ。81年京都大学医学部卒。天理よろづ相談所病院、トロント大学、スタンフォード大学、メルボルン大学を経て、98年京都大学医学部教授。2008年より現職。

「そういう人々を治すのを生きがいとしてきましたので、勝てる可能性が高いと思えばお引き受けします。極度の重症で完治がのぞめない場合は無理をせずコンパクトな手術を行い、必ず術前よりよい状態で帰ってもらうようにしています」

2008年10月の開院以来、2010年9月までの手術件数は348例。心筋症や心不全、弁形成などの弁膜症を合わせて6割、狭心症や心筋梗塞が2割、残りが大動脈瘤や大人の先天性心疾患など。成績も、「死亡例はこの1年半についていえば超緊急手術の一例のみ」と良好だ。患者が80代で、心筋梗塞の後で心臓の中に孔があく「VSP(心室中隔穿孔)」という症例。手術前に血圧が出ないショック状態で難易度の高い手術だった。

「手術はスムーズでしたが、肝臓と肺の機能が戻らず、術後数週間後に亡くなられました。その方以外の80代のVSP患者さんは全員救っています」

手術をしないでいると多くの人は2、3日で亡くなってしまう。VSPの手術死亡率は今日でも高い。約20年前、米田副院長がトロント大学にいた当時は死亡率50%と厳しい状態だった。

「毎日、毎晩患者さんの手術と治療。週に100時間は仕事をしていましたが、やりがいがあって楽しく、このまま一生仕事漬けでもいいと思っていました」

その状況の中で、米田副院長はVSPの「David-Komeda手術」を開発。VSPの手術死亡率を20%以下にする大きな貢献をしたのである。

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