トロント大、スタンフォード大、メルボルン大と、海外での医師生活が長い。常に“患者を断らない、待たせない、温かい”を実践してきた。それができる環境にあった。

だが、日本の大学病院ではそれがかなわず、今の病院に移ってようやく再度、海外生活が生きてきた。若き日の夢の中に生きている。

「父は一般外科の開業医で、夜でも優秀な先生方が手術の指導に来られていました。それを眺めているうちに“外科医になりたい、外科医になって手術で多くの患者さんを救いたい”と思っていたのです。そして、高校生のときに手塚治虫さんの『ブラック・ジャック』に感動しました。今でも心に響いています。この病院の理念と通じるところがあります」

手術の技量だけが磨かれてきたのではない。米田副院長は丁寧な「インフォームド・コンセント」にも定評がある。手術前の説明には十分すぎるほど時間をかける。1時間を2、3回は行う。

「患者さんには十分納得してもらえます。トロント時代から行っていることです」

だから、地域医療に貢献とはいうものの、患者は全国から、海外からも訪れる。

その米田副院長が、名医の条件を、次のように話す。

「圧倒的に豊かな臨床経験を持っていることです。アメリカなどでは仲間うちで医師の優秀さを聞くときに“彼は経験を持っている?”と聞きます。臨床経験、そして患者さん目線でどれだけコミュニケーションがとれるかが大事です。そして、心ある仲間たちとのチームワークです」と。

※すべて雑誌掲載当時

(撮影=尾崎三朗)