「4年神様、3年天皇、2年平民、1年奴隷」

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学生スポーツは、OBが監督やコーチになることが多い。日大アメフト部もそうだった。そして体育会系には、「4年神様、3年天皇、2年平民、1年奴隷」と言われる厳しい上下関係が存在する。約20年前、大学時代を陸上部で過ごした筆者は、入部してすぐに1学年上の先輩から「明確な用事もないのに、3、4年生には話しかけてはいけない」と注意された。

現役選手の間ではこうした厳しい上下関係はやわらいでいるようだが、監督やコーチがかつての価値観や雰囲気を引きずっているケースもある。日大アメフト部はその典型だろう。

OB以外のスタッフがチームに入った場合も、生え抜きの監督に意見することは難しい。なぜなら、彼らは完全な「外様」で、「監督に雇ってもらっている」という意識が強いからだ。たとえ、それがチームをよくするための意見だとしても、監督に逆らえば、せっかく手に入れたポジション(職場・収入)を失ってしまう危険がある。そのため彼らは監督に何も言わない。すると監督はよくも悪くも「裸の王様」となるのだ。

▼閉鎖的な環境が感覚を麻痺させ、隠蔽体質を形成

監督も最初から絶大な権力をふるおうと考えているわけでもないだろう。同じチームに長く所属しているうちに、いつしか麻痺してしまう部分があるのだ。前任の監督が、さらに前任の監督からチーム独自のルールや文化を受け継いだように、自分もそれがあたかも「世の中の常識」であるかのように受け継ぐ。そうした閉鎖的な体質が、まともな感覚を次第に麻痺させてしまう。

そうしたチームでは「隠蔽体質」も自然と形成される。たとえば、パワハラ・セクハラでスタッフが処分されたにもかかわらず、表向きには「体調不良」と説明する。監督が選手に暴力をふるい、コーチがその問題を大学に報告したところ、監督ではなくコーチがクビになる。そんな理不尽な話はたくさんある。

こうした学生スポーツの体質を知る筆者としては、今回の日大アメフト部の問題で、選手が監督の指示に従わざるを得なかったのは理解できるし、監督がいつまでも指示を認めなかいことも、「特別なことではない」と感じる。