アメリカは尻尾を振りすぎる日本をバカにしている

モリカケや日報問題で安倍首相が退陣に追い込まれるとしたら、私は超不本意である。政策そのものが間違っていたという政権評価の本質が隠れてしまうからだ。

一方、安倍政権の外交の成果はどうかといえば、これも評価できるものは何もない。当初、安倍首相は「戦後レジームからの脱却」を標榜して、戦後秩序の見直しを威勢よく訴えた。しかし戦後秩序をつくったのはアメリカであり、それを見直すということは東京裁判や占領政策、沖縄返還などの見直しにつながる。アメリカにとって不都合な真実もそこには隠されている。だからアメリカは安倍政権を当初警戒し、冷たくあしらった。

先の戦争の反省から、日本人の当事者意識が低かった戦後秩序の見直しはどこかでやらなければいけないと私は考えているので、安倍首相が本気で取り組んだら高く評価したと思う。しかし、アメリカに頬を張られた安倍首相は方向転換して、土下座外交に転じる。アメリカ議会や真珠湾で歯の浮くようなアメリカ礼賛演説を行い、トランプ大統領の当選祝いに我先にと駆けつけた。注文通り、IR(統合型リゾート)推進法を3週間で通してみせた姿勢は対米従属どころか、対米隷属といっていい。これまたアメリカ大統領としてのトランプの要望というよりトランプ支援者である(ラスベガス・サンズなどを経営する)シェルドン・アデルソンの要望を受けたものであった。

そうした茶坊主的な使い走りで日米関係が以前より強固になったかといえば、そんなこともない。トランプ大統領は貿易問題など言いたい放題に圧力をかけてくる。尻尾を振りすぎる日本をバカにしているきらいさえある。そんなアメリカべったりの外交をバックに中国や韓国、北朝鮮への強硬姿勢は崩さず、関係は冷え込んだまま。この5年で安倍首相が頻繁に会った世界の要人はロシアのプーチン大統領だが、結局、アメリカに遠慮があるから、ロシアとの距離もまったく縮まっていない。

安倍首相が日本のリーダーとして訪問した国は約5年で76カ国・地域に及ぶという。それだけの時間と飛行機の燃料代を費やしながら、日本の存在感はこの5年で非常に薄れた。韓国、北朝鮮の南北融和でも、周辺の関係国で日本だけが置いてけぼりのムードが漂っている。それでも政権当初に掲げながら一向に進まなかった「拉致問題の解決」につながれば、安倍外交唯一の成果となるのだが。

(構成=小川 剛 撮影=市来朋久 写真=AFLO)
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