エンファクトリーの藤生氏も、「新卒採用の面接で、最初から副業をしたいと言われると違和感はあります」と言う。加藤氏もうなずきながら、「会社に尽くしてほしいとはまったく思いませんが、まずたしかな実務能力を、なんでもいいので身につけてほしい。それを使って複業家になっていくほうが、キャリアとしてもうまくいくと思うんですよ」と続けた。

一度身につけた実務能力には汎用(はんよう)性があるから、以降、どんな仕事を選択しても通用する。一方で、たしかな実務能力がないと、どこに行っても通用しないということなのだ。

「専業禁止」は本当に幸せなのか?

前回記事で詳しく書いたが、今後、エンファクトリーが掲げるような働き方をする個人、そしてそれを推奨する企業は増えていくだろう。このあり方は、ひとつの企業(村)に過剰適応したり、過剰に依存せざるを得ない状態に追いやられたりするより、はるかに幸せなのではないだろうか。

だが、やはり自由と自己責任のもと、自分のキャリアを自分で経営することに、抵抗感やある種の恐怖を覚える方もいるだろう。経営には常にリスクがつきものだからだ。「専業禁止」のエンファクトリーの社内でも、働き方への考えはさまざまだ。

若手や中堅の社員に話を聞くと、「専業禁止とは言いますが、副業は自分の身の丈にあったことからやっていけばいいと思います」「この働き方は、居心地のよい場所、やり方で働きたいという、誰もが描く理想を表現しようとして出てきた、ひとつのカタチにすぎないでしょう」といった声があった。

別に焦って副業をはじめる必要はない。なにより自分にあった働き方を追求すれば、まずはそれでよいのだ。ただ、社会全体で「複業」という働き方が広がっていくのは間違いない。それに対応できるかどうかが、人生を左右することは肝に銘じたほうがいい。

新井健一(あらい・けんいち)
経営コンサルタント、株式会社アジア・ひと・しくみ研究所代表取締役。1972年生まれ。早稲田大学卒業後、大手重機械メーカー、アーサーアンダーセン/朝日監査法人(現KPMG/あずさ監査法人)、同ビジネススクール責任者、医療・IT系ベンチャー企業役員を経て独立。大企業向けの経営人事コンサルティングから起業支援までコンサルティング・セミナーを展開
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