――DDTは路上プロレスなど、過激な部分ばかりが強調されがちですが、経営においてはとても堅実ですよね。今回お話を聞いて、だからこそ一歩一歩成長し、とうとうさいたまスーパーアリーナ大会を開催できるほどの団体に成長できたのかな、と感じました。

【高木】結局、僕らは中小企業なんですよ。今ある人と金を使ってやりくりしていくしかない。WRESTLE-1でも、僕がCEOになってからは、選手にも経営に関わってもらうようにしました。自分で言うのも変ですけど、僕は人材を適材適所に配するのはうまいと思っているんです。

たとえば、DDTができなかったことのひとつに、プロレス学校(現役プロレスラーが若手を一から育成する「プロレス総合学院」)の設立があります。WRESTLE-1は王道のプロレスを学んだ選手が多いから、ここだったらできると思いました。ただ、僕らにはノウハウがない。だったらWRESTLE-1の中で、プロレス学校出身の選手にマネジメントに関わってもらったほうがいい。そこでお願いしたのが、闘龍門出身の近藤修司くんです。

――闘龍門とは、ウルティモ・ドラゴンさんが設立した日本でも有数のプロレスラー養成学校ですね。

【高木】その闘龍門出身の近藤くんであれば、プロレス学校とは何が必要で、どういう指導をしていけばいいのかわかっている。だから学校のマネジメントのトップになってもらった。実際にそれは成功して、4月からのWRESTLE-1の新体制では、新社長を支える副社長に就任しています。

――まさに適材適所が成功したと。ただ、中小企業の経営には今ある人材でやりくりすることが欠かせないことはわかるのですが、その能力の有無は、どうやって見抜くのですか?

【高木】今はプロレスラーもSNSで情報発信をする時代ですから、会って話すだけでなく、彼らのツイッターやフェイスブックを見ますね。そうすると、パーソナルな部分が8~9割はわかる。WRESTLE-1の大和ヒロシくんという選手は、以前からチケットを売るために、地方の商工会議所をまわって、地元の人たちに宣伝していました。彼が個人的にやっている活動をフェイスブックにアップしているのを見て、大和くんだったら営業が任せられるかもしれないと思い、今は営業部長をやってもらっています。

――そうした高木さんの人を見抜き、任せる経営方針は、やはり小さな団体を育ててきたというのが大きいのでしょうか。

【高木】そうですね。DDTを立ち上げたときは専門のスタッフを雇う余裕がなく、レスラーがフロント業務も兼任するしかなかった。でも、誰もが営業やマネジメントができるわけではないので、個人の適性を見極めていかないといけない。人も金も限られた環境で経営していかなければならなかったから、見極める目というものが身についたのかもしれないと思いますね。

高木三四郎(たかぎ・さんしろう)
1970年生まれ、大阪府出身。プロレス団体・DDTプロレスリング社長兼レスラーで、通称“大社長”。15年5月よりWRESTLE-1のCEO、17年3月より同相談役を務める。

DDTプロレスリング
97年旗揚げのプロレス団体。小規模会場のほかライブハウス、書店、路上、キャンプ場など、さまざまな場所でプロレスを行い、エンターテインメント性の強い「文化系プロレス」を名乗る。今年1月より自社で動画配信サービス「DDT UNIVERSE」<http://ddtuniverse.com/>を開始したほか、Amazonプライムにてオリジナル番組『ぶらり路上プロレス』を配信中(高木大社長も出演)。
(構成=小山田裕哉 撮影=尾藤能暢)
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