自動車・繊維産業がアジア市場で潤う

とはいえ、あなたの働く会社がTPPを「活用」できるかどうかは、今後のあなたのマネー計画を大きく左右するだろう。

「これまで日本とのEPAでもなかなか関税を撤廃しなかったベトナムやマレーシアのような新興国が、段階的とはいえ100%の関税撤廃を約束したことは大きいと思います」と菅原氏は言う。もしあなたの会社が、インフラやプラント輸出といった新興国ビジネスに強ければ、今後の業績アップでボーナスが増える可能性は大だ。

経済モデルに基づくシミュレーションでは、自動車などの輸送機器と繊維が有望とか。日本の高機能繊維をベトナムに輸出し、ベトナムで服を作ってアメリカに輸出するといった、加盟国間での新たなサプライチェーンの構築も期待できる。

コンビニなどの小売業の海外進出も容易になるし、内外でのM&Aも活発化するだろう。電子商取引ルールの統一で、中小企業が海外に販路を見つけるチャンスも広がるかもしれない。

一方で、内外の企業との競争は激しくなる。それに負けた会社はジリ貧になり、その影響はあなたの給料に及ぶだろう。

菅原淳一(すがわら・じゅんいち)

みずほ総合研究所政策調査部上席主任研究員。一橋大学法学部卒、同大学院法学研究科修了。通商問題に関する調査レポートを多数執筆。著書に『日本のTPP戦略――課題と展望』(共著)など。
 
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