がん闘病者とその家族は、ときには現実を見てほしい

家族ががんになると、がん闘病記を読む人は多いと思います。なかには前向きになれるものだけを読みたがる人も少なくありません。ただ、前向きなだけでは、がんと対峙することはできません。現実逃避につながることも少なくありません。

きちんとがんと対峙するには、現実に叩きのめされながらも立ち上がり、現実を受け入れながらも、前向きになる方法を必死で模索すべきだと思っています。実際、がん治療専門の医者で、「前向きな人ほど検査の結果が悪いと落ち込みやすい人が多く、治療がうまくいかなくなることがある」といったようなことをいう人もいるくらいです。長期戦になりやすいがんと闘うには、まずは現実を見据え、時には後ろ向きな気持ちになってもいいから、持久力をつけていくことが大切なのです。

私の妻の場合、主治医から「治るとは思わないでください」といわれていますが、いい加減にがんと対峙しているところもあります。できるだけストレスをためないように、夜更かしを楽しむこともあり、好きな発泡酒(お金に余裕があれば、ビールを飲ませてあげたいのですが)を毎日のように飲んでいます。甘いものや脂っこいものを食べることもめずらしくありません。治ることはないため、ある意味あきらめなければならないため、できるだけ長く生きるには、これくらい肩の力を抜かないと、やっていられないからです。このことについて、私もあまりうるさくいうことはありません。

「最悪の顔つき」といわれるリンパ節転移の乳がんが見つかったのが5年半前、肝臓に転移したのが4年前ということを考えると、よく頑張ってくれていると思います。抗がん剤の副作用で体調が悪くなることもありますが、肩の力の抜き方がいいためか、ほぼ普通の人と同じような日常生活を送っています。月曜日と火曜日は朝9時から昼の3時まで働いているくらいです。

妻の闘病がいいとは決していえないでしょうが、がんで闘病しているからといって、日々が色あせるようでは、生きる気力がなくなってしまいます。ですから、たまには自分がしたいように過ごしてみるのもいいかと思います。麻央さんはまじめで忍耐強い人だと思いますし、現実を見据え、十分にがんと対峙できているため、ときには不摂生をしてでも、心から楽しいと思えるひと時を過ごしてほしいような気がします。無責任な意見なのかもしれませんが、十分に頑張っているからこそ、その権利があるように思えてならないのです。

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