麻央さん、海老蔵さん夫婦はレアなケースか

麻央さんのがんと対峙する姿はがん闘病者の励みになるだけでなく、乳がん検診を受ける人の増加にもつながっていると思います。夫婦で人間ドックを受診し、健康を心がけるようになった人も多いかと思います。そして、夫婦のどちらかががん闘病になってしまった場合、麻央さんと海老蔵さん夫婦のようにがんと対峙していけたら、と考える夫婦も多いのではないでしょうか。ただ、麻央さん、海老蔵さん夫婦に近づくのは、かなり難しいと思います。

夫婦愛が強くなければ、どちらかががんになった場合、闘病もサポートもうまくいきません。お金がかかり、精神的に追い詰められることが多いからです。サポートする人のなかには、「わが家がやすらぎの場でなくなった」と感じる人もいます。闘病生活を送るほうもパートナーの愛が感じられないサポートでは、不満、不安が募るばかりです。闘病だけでも大変なのに、これでは生き地獄のようなものです。実際、夫婦のどちらかががんになると、夫婦の関係も悪くなるのは、決してめずらしいことではありません。ですから、夫婦で健康に気をつけるだけでなく、夫婦の愛を築いていくことも忘れてはならないと思うのです。

私の場合、妻とは見慣れた近所を散歩するのも楽しく、そんな妻と結婚できたのは幸せだと思っていますが、それでも限界を感じることがあります。ときには妻に対して、心ない発言をしてしまうこともあります。

批判を承知で書かせてもらうと、娘は私や妻のようなリスクを負わないよう、結婚をしてほしくないと思っているくらいです。若い頃からひとりで生きていく覚悟を決め、生涯の仕事を見つけて健康に気を使いながら生きていくほうが幸せに思えるからです。悲しい考え方ですが、娘を愛すからこそ、そう思わずにはいられないのです。

私のことを「ダメ夫ではない」といってくれるやさしい人は少なくないのですが、このことだけでも、どれほど私がダメ夫なのか、わかっていただけるかと思います。揺るぎない夫婦愛がないと、闘病者もサポートするほうも、がんと対峙するのは難しいのです。