英国の本音は「日本に見放されたら困る」

英インディペンデント紙(6月28日付)は、「EUに加盟していなくても、世界市場で勝負できる製品あるいはサービスを創出できるかが経済上の繁栄のカギを握る」と指摘する。特定のグループに加盟しているかどうかは問題ではないのである。

競争力のある経済を維持するためのバックボーンとして、同紙は「英国には安定した政治と成熟した民主主義がある」とも言う。現在は与党・保守党が党首争いの真っただ中だが、それでも世界の紛争地のような政治の不安定さはない。欧州全体にテロ発生の危険性はあるものの、通常は日本同様に安全な日常生活を送ることができる。

今は下落の一方だが、ポンドを維持できる点も英国の強みだという。離脱後も世界の基軸通貨であることは変わらない。

「残留していればいずれユーロ圏に参加するよう圧力があっただろう」

「競争力がある経済」「安定した政治」「ポンドの強み」がある英国。インディペンデント紙は、離脱の利点として次の3点を挙げている。

まず、EUへの拠出金をゆくゆくは国内の経済活性化や生活水準の向上に使えること。「毎週3.5億という離脱派運動が掲げた数字は不正確だったものの、この拠出金がなくなることは大きい。

難民・移民については「無制限の流入が停止する代わりに、経済状況に応じて受け入れるというほかの多くの国がやっている制度に移行するため、医療サービス、学校、住宅などへの圧迫感が大幅に減少できる。

EUの単一市場に参加できなくなったことは、逆に言うと二国間あるいはほかの地域経済圏との貿易協定に目が向くことになる。離脱後は、「EUの共通農業政策に縛られることなく、もっとも安い価格の食糧を輸入することができる。これが家計に貢献し、インフレ率も下がるはずだ」。今後は「EUの規定を守るために犠牲になった産業、たとえば漁獲高を大きく規制されたために打撃を受けた漁業などが、離脱を機に活性化する可能性もある」

補足すれば、離脱後も英語が国際語だという利点は変わりそうにない。

英国に拠点を置く日系企業は1084社(2014年10月時点)で、そこに約16万人が働いている。実は、「日本に見放されたら困る」というのが英国の本音だ。離脱が現実化するのは数年先になりそうだが、EU規定にとらわれず、日英二国間に有利なビジネス交渉を進める大きな機会になりうるのではないだろうか。

(EPA=時事=写真)
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