何色のネクタイをいつ締めるのか

ご自身の肌や目、髪の色に合わせた色を使うことは大切です。オバマ大統領は、真紅のネクタイを好んで使いますし、ビル・クリントン元大統領は水色や卵色など淡い色みのネクタイが多いです。

しかし、色には複数のメッセージ性があります。TPOによって色を使い分けることで、メッセージをはっきり伝えられると同時に、無用なトラブルを避けられるでしょう。

たとえば、ネクタイは赤と決めている人が、顧客への謝罪に出向いたとしましょう。果たして、謝罪はうまくいくでしょうか。答えはNOです。赤は「情熱」というメッセージのほかに、「強い怒り」というネガティブなメッセージもあるからです。「なぜあの担当者は、こちらを威嚇するような赤いネクタイをしているんだ」と、火に油を注ぐ結果になりかねないのです。

安倍晋三首相は、色の特性を理解し、TPOによってネクタイの色をうまく使い分けていて、お手本になります。黄、赤、紺色のネクタイを締めている画像をご覧いただき、どんなときに撮影されたものか当ててみてください。

どんな場面か当ててみよう ※答えは本文に(写真=AFLO)

ヒントとして、色の持つイメージをお教えいたします。

黄色やオレンジは「コミュニケーション・カラー」です。オレンジは、特定の人や少人数を相手にするときに効果を発揮します。黄色は、たくさんの人と親しくなりたいという気持ちを表す色です。

赤のネクタイは「パワー・タイ」と呼ばれます。「燃えるような」という言葉に代表される色ですから、情熱やリーダーシップを示すのに最適な色。決意を表明したり、自信を持っていることを伝えたいときに選びましょう。

就活スーツや銀行員のスーツが紺であるように、ネクタイであっても誠実さをアピールできるのが青色です。

ほかにも、グレーは受容する気持ちを表す色であり、目上の相手と話をするときによいでしょう。ピンクやラベンダーは女性に助けてもらいたいときに効果的です。

さて、ヒントが長くなりましたが、Aの画像は、街頭演説でのシーンです(2014年2月2日)。安倍首相は、街頭演説では黄色のネクタイを締めることが多いようですが、親しみやすさを表現できるため、ベストな選択です。

Bの画像は、15年4月29日に米議会上下両院合同会議で演説したときのもの。日本の首相としてのリーダーシップ、日米の強固な同盟を強調するにふさわしい赤色で、米議会から評価を得ました。

Cの画像は、15年2月2日にイスラム国邦人殺害事件で質問が集中した予算委員会でのものです。誠実さを強調することに成功しています。

皆さんもぜひ今日から効果的にネクタイの色を使い分けてみてください。

市川浩子(いちかわ・ひろこ)
アパレルや美容業界を経て、 現在は心理学やイメージアップの知識を活かし、 多数の企業や自身が主宰する「モテ塾」にてイメージアップやマナー、 コミュニケーションの研修・講演等を行っている。著書多数。
(構成=唐仁原俊博 写真=ロイター/AFLO(ヒラリー氏)、AFLO(安倍首相))
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