仕事から“離れる”と成果が上がる理由

インディアナ大学の心理学者Lile Jia氏らは「遠方の教訓――創造的な認識に対して、空間的な距離が持つ効果」という論文を発表している。実験の方法は、数十人の学部生をふたつのグループにわけ、各々が思いつく限りの交通手段を挙げてもらうというもの。

グループ1:この課題は「ギリシャで学ぶ」インディアナ大学生が考案したと伝える。
グループ2:「地元インディアナ州で学ぶ」インディアナ大学生が考案したと伝える。

このふたつのグループには明らかな違いが見られ、グループ1「ギリシャで考案」と聞いたグループのほうが、思いつく交通手段のほうが多かったという。

なぜ、「課題がどこで考案されたか」が重要なのだろうか。

それは、遠くで考案されたという意識から、地元の交通手段だけでなく、さまざまな手段へと思考が広がっていったからだ。つまり、インディアナ州の中を動くのではなく、世界中を動く手段を考えたというわけだ。

今回のように地理的な距離ばかりでなく、時間や確率的な距離でも、人は同じ反応を示すそうだ。「距離的に近く感じられる」ことで、より具体的でイメージ通りの意味でとらえて考えてしまう。ところが「距離が遠い」ことによって、より抽象的に発想することが可能になるというわけだ。

これこそが、休暇が仕事の効率を高め、発想を豊かにする理由である。

つまり、“日常”を離れて距離をおくことで、思考はふいに“何がどこにある”“ここはどこだ”といった具体性をなくして抽象的になり、空間がひろがり、今までと違うアイデアが浮かぶようになる。仕事から離れて初めて、今まででは考え付かなかったようなことに思いを巡らせるようになるのだ。