商品の魅力を正しく伝えるためには、売り手側にも知識が求められます。だから店舗のスタッフは、定番商品である柳宗理のやかんなどをはじめ、1つひとつを自分で使うだけでなく、生産現場まで訪れ、商品の魅力を体験したうえで接客しています。そういう売り場でスタッフとコミュニケーションを交わし、商品を購入することは満足感につながる。「あそこで買うと気持ちいいよ」という体験は、デザインの未来に少しずつつながっていくと考えています。また、そのように僕らの活動を知ったお客さんだけが集まってくるように、店舗は人通りの少ない立地にあえて構えています。

現在、この「D&DEPARTMENT」は、11カ所にまで広まりました。プロジェクトとしても、ロングライフデザインの視点から47都道府県を見つめ直した「d design travel」というガイドブックをはじめ、様々な取り組みを展開するようになりました。

現地の人がなかなか気づくことのできない、その土地にあるよい商品の価値を、よそ者の僕たちが見つけ出し、再発見してもらう。全国47都道府県すべてに、こうした土地の個性を見直す拠点をつくりたい。商品を生み出すだけでなく、新しい視点を提供するのも、デザイナーの仕事なのではないかと、全国の売り場を通して問い続けているつもりです。

東京世田谷から欧米にまで進出!

2000年、東京世田谷に「D&DEPARTMENT」1号店がオープン。現在全国10店舗、ソウルに1店舗の計11店舗を展開。ニューヨークとロンドンにはコム デ ギャルソンとの共同店舗も構える。関連事業として、60年代の廃番商品をリ・ブランディングする「60VISION」、旅行文化誌「d design travel」などを展開。

 
ナガオカケンメイ(デザイナー)
1965年、北海道生まれ。日本デザインセンター原デザイン研究室を経て、97年にデザイン会社「ドローイングアンドマニュアル」設立。2000年、D&DEPARTMENT PROJECTをスタート。日本初の47都道府県をテーマとしたデザインミュージアム「d47 museum」館長。
(構成=杉原環樹 撮影=佐藤新也)
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