決算書は敷居が高いというビジネスマンも、ここだけ見れば企業の業績がわかるエッセンスを紹介。

優良企業か、これからの成長が期待できる企業か、それとも崖っぷち企業かを、簡単に見分ける方法がある。財務3表と呼ばれる損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CF)のうち、CF計算書を使ったやり方だ。

上場企業を中心に金融庁に有価証券報告書を提出している企業なら「EDINET」で検索すれば、誰もが閲覧可能。その有価証券報告書の1ページ目を見るだけ、である。

CF計算書というのは、会社の資金の出入り、つまりキャッシュベースの入金と出金を示すものであり、営業活動CF、投資活動CF、財務活動CFの3つで構成されている。

まずはそれぞれのCFの数字を調べて、入金超であれば「○」、出金が多ければ「△」とすればいい。企業本来の活動を示す営業活動CFは、新興企業でもなければ「○」が大前提。企業継続の生命線ともいうべきものだが、先ごろ経営破綻したスカイマークは、2014年4~9月の半年決算で「△」に転落していた。

「黒字=善」というイメージがあるが、投資活動CFと財務活動CFの場合、赤字(=出金超)を示す「△」は必ずしもそうではない。「投資による出金>投資の回収」を示す投資活動CFの「△」は、将来への布石に向けて積極的であり、「借入金返済>新規資金調達」を意味する財務活動CFの「△」は、企業が財務体質の健全化に取り組んでいるとも読めるからだ。

実際に主な企業について見てみよう。例えばファーストリテイリングは、13年度の営業活動CFの数字が1105億円で「○」、投資活動CFが-563億円で「△」、財務活動CFが-440億円で「△」。他の年度を調べても、5期連続して(1)の「○△△」超優良・絶好調型である。(表を参照)

パナソニックは、ファーストリテイリングと同様、5期連続で営業活動CFは「○」で、財務活動CFは「△」だが、投資活動CFが入金超を示す「○」の年度がある。例えば13年度なら営業活動CF5819億円、投資活動CF121億円、財務活動CF-5323億円。設備投資の抑制や一部事業の売却で、経営再建を加速させていることが読み取れる。

▼一目で経営状態がわかる「CF早見表」を解説

(1)営業が好調で、稼いだキャッシュを将来のための設備投資に使い、かつ、営業で獲得したキャッシュで、財務を健全にするために、借り入れの返済をしていることをうかがわせる。超優良会社ならびに絶好調な会社と見ていい。

(2)営業で稼いだキャッシュと、財務からのキャッシュ(借金・増資等)を利用し、さらなる利益を目指し、設備投資を急いでいる企業であることが見て取れる。優良企業、ないしは成長を目指す企業といえる。

(3)投資活動CFが入金超になっていることから、過去の過大な設備投資などで膨らんだ固定資産を整理していることをうかがわせる。それにともない、借り入れを返済し、財務力をつけようと財務活動CFは出金超になっている。

(4)財務活動CFのみが入金超ということは、まだ借金できる体力があったことを意味する。投資活動CFは出金超、営業活動CFの入金超が見込めるようなら、成長への期待が持てるといっていいだろう。

(5)営業活動CFと財務活動CFの出金超は、販売不振に陥り、借り入れ負担が重くのしかかってきているため、借り入れ減を意味する。そのため固定資産を売却するなどして入金超にし、そのキャッシュを、借り入れ返済に回し生き残りを図っているのだ。

(池田陽介(税理士・池田総合会計事務所所長)=監修)
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