八寸ッテ、ナンデスカ?

また、外国人客の受け入れに後ろ向きなケースの裏には、店側の受け入れ体制がまったく追いついてないという現状もあります。単純に、「日本語以外のメニューブックがない」「スタッフが誰も英語を話せない」、あるいは最近であれば「ハラルやベジタリアンに対応できるメニューがない」などです。

ただし、言語の問題について言えば、タブレット端末を通じて、翻訳機能を駆使したり、あるいはビジュアルで意思疎通を図ったりと、そのハードルは次第に下がってきています。あるいは外国人のためにわかりやすかったり、ベジタリアンに対応できたりするコースメニューを用意するという動きも少しずつ増えてきました。ですので、単純に「受け入れのハードル」という点について言えば、時間とともに問題は解決していくでしょう。

むしろ個人的に懸念しているのは、日本食を体験した外国人が本当にそれを楽しんでくれているのだろうかという点です。ラーメンや寿司など、ある意味わかりやすい食事であればよいのですが、例えば懐石料理のコースを食べたとしましょう。日本人でさえ、「八寸って何だろう?」とか、「なんで食事の最後にごはんと味噌汁が出てくるんだろう?」ということを理解している人が多いとは思えません。それをろくな説明もなく、外国人にその良さや価値をわかってくれというのは無理があります。すると、せっかく1万円も2万円も払って高級日本料理を食べたのに、「まあまあおいしかったけど、よくわからなかった」という感想を抱いてしまうはずです。