そうして、折形について知れば知るほど面白くなると同時に、現代生活にかなった折形の必要性も強く感じるようになりました。結果として、和紙作りから折り手順までをデザインすることに。2001年からは「折形教室」を開き、現在まで生活の知恵としての折形を伝えています。

折形教室は、折形の歴史を学びつつ、必要に応じて受講生自らが折形を折れるようになることを目標にした教室です。もちろん、守らなければならない最低限のルールも教えます。折り端が左側にきてお祝い事に使う「右前」、折り端が右側にきて凶・ご不幸に使う「左前」というルールも、重要なことの1つとして伝えています。

こうしたことを踏まえたうえで、最終講義では実際に誰に、何を、いつ贈るのかを想定して、贈答品を各自教室に持参してもらいます。そして、どのような和紙を使うか、どういう手順で折るかを考え、その贈答品を包む折形を、贈る相手のことを考えながら心を込めて完成させていきます。

この折形教室では、実は広義のデザインを教えているつもりです。相手の存在との間にはインタラクティブな関係性があるのだということを気づいてもらいたいと思っています。折形を通して学んだモノの見方や考え方は、その後の日常生活でも生かせるはずです。

500人が受講した伝統礼法の教室

「折形教室」は16人の生徒を集め、1カ月に2時間の講義を6回、半年で終わるプログラム。設立から現在まで、受講生の数は約500人超。折形の購入は、東京・青山の折形デザイン研究所など店頭販売のみ。写真の紙幣包みのほか、箸包み、美濃手漉和紙の職人と共同開発した折形半紙などがある。

 
山口信博(グラフィックデザイナー/折形研究家)
1948年、千葉県生まれ。有限会社山口デザイン事務所代表。2001年に「折形デザイン研究所」を設立。俳句結社「澤」同人。深澤直人『デザインの輪郭』など多数のブックデザインやアートディレクションを手がける。著書に『折る、贈る』など。
(構成=矢倉比呂 撮影=佐藤新也)
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