収益の鍵を握る売り値や配分の調整

いままで見てきたミドルクラスの外国客誘致の“勝ち組”の共通項が、ホテル予約サイトの有効活用だ。しかし、そこに登録さえすれば、外国客が増えて儲かるのかというと、そうではない。前にも指摘したように、宿泊客全体に占める外国客の割合は1割程度。他の国内客とのバランスや、複数のホテル予約サイトを通じて客室の売り値や配分を調整し、いかに収益を最大化するかが重要なポイントとなる。そうしたマネジメントのことを「レベニューマネジメント」と呼ぶ。

たとえば、ホテルファインの場合、通常「休憩」「サービスタイム」「宿泊」という3つのプランが部屋のタイプごとにあって、時間や曜日、それと時期に応じて宿泊料金を変えている。そして効率よく、1日に2回転ないし3回転以上させていけば、「1部屋当たりの売り上げでシティホテルを上回るようになるのです」と関会長はいう。

しかし、外国客の宿泊比率を増やしすぎると、休憩やサービスタイムでの回転数が落ち、売り上げもダウンしてしまう。そこで、コンピュータに蓄積された過去の宿泊状況のデータに基づいた、外国客の利用や国内客の休憩などの需要予測を行いながら、適切な販売価格を決める。そのレベニューマネジメントは、宿泊が基本のシティホテルより数段も高度で複雑だという。

そうした事情は新宿区役所前カプセルホテルでも同じ。「稼働率は高い水準で推移しているものの、海外サイトからの予約が増え、割引料金での利用比率が上がっています。客単価を上げるために、海外サイトからの予約受け入れの配分をどうするか、毎日頭を悩ませています」と小川室長は語る。

それと、海外からの団体客の扱いもポイントになってくる。大量の集客は大きなメリットなのだが、その一方で仲介する旅行会社からの宿泊料金の値引き要請も厳しくなるからだ。来山北館の山田社長は「もともと1泊当たり2500円前後の薄利の料金設定なので、値引きは受け入れにくい。また、連泊する外国客を隙間なく組み合わせることで稼働率を維持しているのに、団体客を入れるとそれが崩れて再構築に時間がかかるので、お断りしています」と話す。