キーワードは多様化、個性化、短サイクル化

厚みのあるしっかりとした麺になり、より生麺に近づいた。

「『マルちゃん正麺』は、パラダイムシフトによって新しい市場を切り拓いた。その強みは企業および商品ブランドともに一番手として評価されることにつながった。そのため、他社は相対的に二番手以降というポジションになってしまう。だからこそ東洋水産は、パイオニアとしての商品開発力や技術力が消費者の心に、王道、正統派、本物志向といったイメージを醸成させることに成功したわけだ」(野口教授)

そのことが、多様な商品ラインアップにつながっていく。「マルちゃん正麺ファミリー」と名づけられたアイテムは、醤油、味噌、豚骨、塩といった主力商品から、うどん、冷やしタイプと、10種類におよぶ。パッケージも「マルちゃん正麺」のイメージカラーとして定着した金色でほぼ統一されており、それがまた、消費者への訴求力を高め、従来とは異なるターゲット層も獲得していける。

そこでの今回のリニューアルである。野口教授によれば、最近の消費傾向のキーワードとして、多様化、個性化、短サイクル化が挙げられるという。その意味では、新発売から4年は、むしろ長いぐらいで、3年でもよかったかもしれない。それだけに、東洋水産は満を持しての、そして十分に勝算ありと見ての決断だといえるだろう。

野口教授は「日本という国は“美食国家”だ。ミシュラン三ツ星の飲食店数は世界一。パリやニューヨークより東京のほうが多い。東洋水産は、この国の食文化をリードするパワーを持っている。インスタントラーメンというジャンルでいえば『マルちゃん正麺』で見せた創造性を発揮して、これからも消費者が『あっ!』と驚く様な商品を次々に世の中に出していってほしい」とエールを送る。

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